鬼神 | ナノ



きょしょ 2/2


叫ぶように声を響かせ、迅雷剣を振るう。
近場が一掃できれば、ヒョウで牽制して。
繰り返し、繰り返し、負けられないのだと、言い聞かせる。
手に刺さった方の矢には毒があったのだろうか。
霞む視界に頼り切るのをやめ、感覚だけで剣を振るう。
しかし、目を開いていなければ、疑われるだろう。
矢を弾き、剣先を流して、槍を叩き折る。

「し、司馬師が二人いるぞ!」

響いた声に眉を寄せた。

「隠れていろと、言っただろう!氷雨!」
「それは、私の言葉だな…!」

どちらが本物の“司馬師”なのか、わからないのだろうか、だが、ほとんどは私に引きつけている。
きっと冠をしていることと、武器故だろう。
つまり、子元様が方天画戟を持っていて、五丈原の呂布の可能性が高い。
五丈原の呂布であったのなら、殺される可能性が高いのだ、しかも、今まで現れていなかったのだし。
それに対して、私が五丈原の呂布であったとしても、方天画戟を持っていない。
さらには、これまでの戦いで疲労しているのだ。

「ぐっ」

子元様の苦痛に耐える声が聞こえた瞬間、司馬昭様たちの声が響いた。
あたりを一掃してくれた彼らに、ホッとして、そちらを見る。
冠を外して、子元様に手渡した。

「お怪我は、」
「大事ない」
「そうですか…ですが、何故、出てきたのですか」
「…まだ、言えぬ」

口を噤んだ子元様に眉を寄せて。
それでも、きっと彼がその理由を言うことはないのだろう。
そう判断して、上着を脱いだ。

「わかりました。これ以上は聞きません。ですが、もう無茶はなさらないでください」

子元様の痛みを感じている声を聞いて、私は。
告げれば、すまなかった、と額に口付けられる。
本当によかった、とそう告げてから、自分自身の装備を戻した。

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