鬼神 | ナノ



ぶんおう 2/2


「貴様を殺すのは、惜しい」
「それは、こちらの台詞だ」

告げれば、間髪入れずに返ってくる言葉。
目を細めてその整っている顔をまっすぐに見て、告げた。

「だが、貴様が他の者の手で討たれるのなら、私が先に狩っておこう」
「ふ、情熱的だな?」
「嫌いではないだろう?」
「そうだな。俺も同意見だ!」

ぐ、と投げられた槍を叩き落として、踏み込む。
だが、瞬時に引いて、別の方向に走った。
子元様に弓引く兵卒を方天画戟で切り裂いて、命絶えたその姿を見下す。

「子元様には指一本触れさせぬ………興醒めだ」

方天画戟を仕舞い、迅雷剣に持ち直す。
つまらん、と小さく呟いて。
子元様に侍る。
楽しい時間は、終わるのも早いものだ。
文鴦に視線を向ければ、彼もこちらに視線を向けていた。
だが、私が視線をそらすのと同時だろうか、彼も踵を返し去っていく。

「あの男は、どうだった?」
「彼は…私にとっての諸葛亮でしょう」

小さく笑えば、驚いたように瞬いた子元様。

「諸葛亮…好敵手ということか」
「はい!久しぶりに八割方の力を出せました!」
「…八割」

私の言葉をおうむ返しにして、司馬昭様が目をそらす。
その隣で元姫が彼の足を踏んだ。
…司馬懿様と張春華さまの肉体版だろうか。

「強いのね、氷雨は」
「そうですね、それが取り柄です。時勢から見ると、ちょっと外れていますが」

苦笑して、子元様に視線を戻す。
私の頭を一度撫で、行くぞ!と声を上げた。

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