鬼神 | ナノ



ないたあかおに 2/2


湯飲みに視線を落としたまま、彼女は静かに語る。

「その計画は成功し、赤鬼は村の人間たちに好かれ、仲良くなりました。感謝された赤鬼は、ここまで仲良くなれたのは青鬼のおかげだ、と彼に感謝を告げるために一度山に帰ります。自分の家へ到着すると、扉のところに紙が一枚貼ってありました。一体なんだろう?赤鬼は不思議に思って近寄ります。それは青鬼からの手紙でした。『僕の友達の赤鬼へ、君が村の人間と仲良くなれてよかった。でも、折角仲良くなれたのに、君が僕と仲良くしていれば、きっと君も僕と同じように嫌われ者になってしまう。だから、僕はこの山を離れることにするよ。さようなら。君の友達の青鬼より』。それを読んだ赤鬼は、自分のためにそこまでしてくれた大切な友達の青鬼がいなくなってしまったことを悲しみ、泣いてしまいましたとさ」

氷雨はお茶を一口飲む。
これは、その話の終わりを意味する。
ゆっくりと瞳を上げた彼女は、柔らかく俺を見つめる。
彼女の話してくれる話は、基本的に教訓なのだと言っていた。
どこで聞いたのか、なんてことは聞いていないけれど、弟にも昔話したのだ、と楽しそうに笑う。
このお話はどうでしたか?と、馴染みの質問をされる。
少し考えて、答えた。

「なんつーか…青鬼って賈充みたいだな」
「賈充殿、ですか?」
「ああ、赤鬼が俺だとすると…賈充ってそういうとこあるだろ?」
「…そうですね、否定はしません」

苦笑をしたまま告げる氷雨。
やはり、賈充が俺の器がどうのこうの、と言っているのは知っているのだろう。
俺は兄上を支えてるだけで十分だってのに…。
肩をすくめれば、氷雨は苦笑するように俺を見た。

「きっと、賈充殿は子上様が大好きなのでしょうね」
「幾らなんでも限度があるだろ…?」

くすくす、と俺の言葉に笑う氷雨に真面目に聞けよな、と拗ねてみせる。
そうすれば、彼女は申し訳なさそうに、少しだけ楽しそうに謝ってみせた。
二人で話をすれば、わだかまっていたものがゆっくり溶かされていくような気がする。
それが俺だけじゃなければいいと思う。

「さて、そろそろ行くか!俺が兄上に殺されそうだ」
「ふふふ、子元様も子上様のことが大好きですから、大丈夫ですよ」
「いやいや、俺なんかより氷雨のことが大好きだろ…」
「っ…子上様にそう言われると、なんだか照れますね」

目元と耳を赤くしてそう答えた氷雨に、彼女が俺の義姉さんになる日も遠くなさそうだと笑った。

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