鬼神 | ナノ



かこうは 2/2


「いやいやいや、それってつまり姉妹ってことだろ?」
「ふふ、我が一族は特殊なので、家よりも主を優先するのです。ですから、私は司馬家の、彼女は夏侯家の護衛という括りになるのです」
「え、いや、まあ、確かにそうなのかもしれないけど…」
「姉様、あまり仲権様をいじめないでください」
「ふふ…すまない。夏侯覇殿とお前が笑い合っているとことが見えたものでな。少しばかり、からかいたくて」

驚いたような顔をする妹に緩やかに微笑む。
大切にされているようだ。
それに、妹の顔を見れば、きっと彼女は夏侯覇殿のために命をかけられるだろう。
愛らしい顔で夏侯覇殿を見つめる様子は、もしかしたら恋慕も混ざっているのかもしれない。
だが、それでも、それが邪魔をして夏侯覇殿を守れなくなるような、そんな教育はしたつもりなどないのだ。

「夏侯覇殿で、良かったな」
「そうですね…姉様が仲権様の護衛じゃなくて良かったです」
「ふふ、そうだな。その可能性も大いにあったのだから」
「えっ」
「おや、知りませんでしたか?」

ぱちり、瞬いて夏侯覇殿を見る。
彼はパチパチと瞬いて、私の顔をじっと見つめた。
それから、妹を見て、ニカっと明るく笑う。

「俺も、鈴蘭が俺の護衛で良かった。氷雨に隣に立たれてたら、俺の劣等感刺激されすぎだって」

どこかすねたような声に、ああ、身長か、と苦笑する。
私の身長は夏侯覇殿よりも高い。
そもそも子元様より少し小さいくらいなのだから、当たり前とも言えるだろう。
ふと、後ろから私の名を呼ぶ子元様の声が響く。
そちらに視線をやれば、ゆっくりとこちらに歩いてくる子元様。
私の隣に堂々と立ち、柔らかな瞳で私を見つめた。
その瞳にどきりとして、挙動不審になりそうなのを必死に抑える。
今は、護衛中だ。

「私も、氷雨が私の護衛で良かったと思っている」
「…有り難きお言葉です。私も…子元様の御身をお守りできることを誇りに思っております」
「それだけか?」

まっすぐと、伺うような視線を向けられて、堪えきれず頬が赤くなるのを感じる。
深い色の瞳が柔らかく細められて、美しいのに男らしい手が私の髪に触れた。
ゆるり、ゆるり、と撫でられる。

「可愛いな」
「あ、に、う、え!氷雨を困らせないでください!」
「子上、邪魔をするな」
「…司馬昭様、ありがとうございます」

苦笑して、置いてけぼりになっているだろう、夏侯覇殿と妹に視線を向けた。
が、何故か夏侯覇殿が照れたように顔を真っ赤にしていて、妹は呆れたような顔をしていた。
二人をまじまじと見れば、二人は言い訳するように口にした。

「そんなの司馬邸でいつもやっていらっしゃったでしょう?」
「おま、戦場で!照れてもおかしくないだろ?!」

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