鬼神 | ナノ



かくにん 2/2


苦笑しながら告げれば、ひくり、と頬を引きつらせた妹がいる。
司馬家の方々の方を見れば、彼らもどこか青い顔をしていた。
唯一平然としているのは、子元様くらいなものだ。
もしかしたら、平然として見せているだけなのかもしれないが、それでも私には幸せなことで。
その段階でやっと、部屋の中の惨状を目にした。
が、

「武器は一つも折れていないな…よかった、また新調するのは骨が折れる」
「え…まさか、」
「方天画戟の一撃は簡単に武器ごと相手を斬り伏せる。武器などやすやすと破壊できるぞ?」

にこり、笑って、いつも通りの装備を身につける。
迅雷剣を身につけるのは、それが私の主、子元様の武器だから。
ヒョウを使うのは、遠くからの敵に対応しやすいから。
そして、こちらのどちらも、蜀でも呉でも専門として扱う将がいないから、だ。
私がヒョウを装備していることに目を見開いた妹は、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
…色々捨てろとは言ったつもりだが、まあ、実際その時に捨てられればそれでいいだろう。

「お強いのですね、」
「そうあれと教育されて、そうあるべきだと訓練を続けたからな」

目を伏せながら、父と母を思い起こす。
弟がまだ生まれる前からこの手は武器を持った。
そして、生まれた弟に父がつきっきりになっても、一人でまだ見ぬ主を守るために訓練を続けた。
母には最低限の作法だけでもと、覚えさせられて…簡単に、とまではいかないものの他の人間と比べれば容易に覚えられた方だろう。
前世の知識とは、どこで役に立つかわからないものだ。
時折、弟におとぎ話を聞かせて、彼は嬉しそうに笑ったのを覚えている。
一つだけ、離れて置いてある弧刀に視線を向けた。
そうっと瞳を伏せる。
弟の時は父がいたから、私と弟は対峙していなかった、だからこそ縁が切れていなかったのだと、そう信じる。

「…お前の兄は、物語を聞くのが好きだった。だが、物語よりも何よりも、主を好きになったのだ」

自分に言い聞かせるように告げて、ゆっくりと目を開く。
もう、弟のことは振り返らない。

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