鬼神 | ナノ



かくご 2/2


かの方はとても強い。
そして優しいと聞く。
ならば、きっと、この妹は無駄に命を散らす必要はないだろう。
私が、斬ることだって…ないはずだ。
いや…あって欲しくない、とそう思っている。
だがそれでも、確認しなくてはならないことがあるのだ。
どことなく不安な顔の妹に視線を向ける。

「妹、確認することがある。ついてこい」
「…姉様?」

ゆっくりと歩き始めた私の後をついてくる妹を確認して、司馬邸の一角に足を運んだ。
私に与えられたその一角には、大量の武器が並べてある。
様子を見るためにだろうか、ついてきた司馬家の方々を意識的に感覚から排除して、一つの武器を手に取る。

「姉様?」
「私に得手不得手はない。だが、合う武器というものは存在する」
「何、を?」
「方天画戟、我が相棒だ」

妹が息を飲んだのを感じた。
それもそうだろう、今まで私は彼女の前で、この武器を振るったことはない。
ただ、私自身も進んで持つことはない理由がある…が、それは今はどうでもいい。
口元に小さく指を触れながら、反対の手でくるり、とそれを回す。
それから、真っ直ぐと妹に向き合った。

「殺す気で来るがいい。我らは敵として見えれば相手を殺す、親愛は全て捨てろ」
「っ…ねえ、さま」
「武器を取れ」

彼女が手に取ったのはヒョウ。
小さく口元だけで微笑んで、緩慢な動作で武器を構える。
しばらく戸惑ったようにしていたが、やがて覚悟を決めたのか、こちらをきっと睨むように見る妹。
数秒見つめあって、一度、手の中の方天画戟を振るった。
誰を守ることもない、その戦で私は、鬼と称される。
それは、五丈原より前、私が父とこの儀式をする前だった。
情けも容赦も血も涙もない。
そう評される私は、どこまでも何かを奪う手でしかない。
二撃目で、妹の体が宙を飛び、壁に勢いよく激突したのを見る。
隙を逃すことのないように、私は強く地面を蹴った。

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