えんこく 2/2
「敵将、討ち取ったり!」
響くように声をあげる。
司馬懿様や張春華様、司馬昭様、さらには子元様よりお褒めの言葉を受ける。
公孫淵が籠城し始めたのを見て、梯子を置くべきところへ戻った。
…が、司馬一族の部下は皆優秀らしい。
すでに掛けられた梯子に、感謝と労をねぎらう言葉をかけて、登っていく。
敵が登ってくるとは考えていなかったのだろう将を切り捨てて、そのまま敵本陣へ向かう。
走った勢いを殺さずに、飛び上がる。
迅雷剣を構え、公孫淵周辺の敵将を一閃した。
「てっ、敵襲だと?!」
「喜べ、痛みさえ感じさせずに切り捨ててやる」
片頬だけ釣り上げて、迅雷剣を構える。
敵本陣に入り込んだのは私一人だというのに、完全に腰が引けている兵士たちを横目で確認した。
「き…鬼神だ…!」
「ご、五丈原の、呂布が、なんで此処に!」
う、うわあああああ!と兵士たちは我先にと門から出て行こうとする。
開け放たれた門からは、皆様がやってきて驚いたような顔をしていた。
「あら?私たちはてっきり、総大将を倒したからこその慌てようかと思ったのだけれど」
張春華様の言葉に答えようとしたが、その前に錯乱したらしい敵兵士が私に向かって刀を向けてきた。
がむしゃらに振り回したその男につられたのか、逃げきれなかった兵士たちが私に向かう。
彼らは口々に、鬼神だとか、五丈原の呂布だとか、そんなことを口走っている。
ため息をひとつ吐いて、公孫淵の首元を強く叩いて気絶させた。
迅雷剣を構えなおし、鼻で笑った。
「ならば、その鬼神が切り捨ててくれる」
混乱の所為で、子元様方へ向かう兵士たちがいなくてよかった、と心から思う。
三度剣を振るい、全員を地に伏せさせる。
それから公孫淵の様子を見る。
ふむ…一応まだ生きているようだ。
「公孫淵、捕獲いたしました」
返り血ひとつ浴びていない状態で、にこり、と主人とその家族へ向かって微笑んだ。