義妹 | ナノ



(にかいめの世界)


1度目の記憶があった。
彼女は相変わらず、純粋で、小さな存在だった。
嬉しいときには目をキュッと細めて、悲しいときは唇をかみしめて。
ヤツらは今回も居た。
ヤツらが来る度に、彼女は1度目と同じように怒りを露にして、そして、私のために涙を流した。
その涙は、とても綺麗だと、そう感じていた。
今回は6歳しか違わなかったが、それでも、変わらぬ彼女だった。
だからこそ、1度目のことが起こった辺りの雨の降りそうな日は、彼女を外に出さなかった。
危ないから、とそう告げれば、彼女は不思議そうにしながらも、こくりと頷く。
いいこだ、と頭を撫でれば、照れたように微笑んだ。

そんな彼女は、夕陽が血のように赤い日に、また、居なくなった。
ヤツらはわたしを待ち伏せて、すぐに死なない程度の傷をつけて姿を消す。
人通りの少ない裏路地に連れ込まれたこともあり、誰かが気がついた様子はない。
それでも、彼女が無事なら、兄として、誇れると思った。
薄れた意識が、呼び起こされたかのように視覚と聴覚だけを蘇らせる。
正確に言うのであれば、怪我によって手足が動かず、声を出すこともままならなかった、が目と耳だけは無事だったと言うべきだろう。
だが、そんなことが重要なのではない。
重要なのは、わたしの横に居る■■のことだ。
わたしの傷口に手を当てて、必死に声を上げている。

――いたいの、いたいの、とんでいけ
  □□のにぃちゃから、とんでいけ

言った瞬間、■■の頬に赤い線が走った。
その言葉が繰り返される度、白が赤に浸食されていく。
やめろ、そんなことしなくていい、たのむから、
わたしの声は出ず、だが、わたしに意識があることは気がついたらしい。

――にいちゃ…いたいの、なく、なった…?
  □□の、まほー、

傷だらけの■■は、そこまでしか言葉にできなかった。
軽い衝撃がわたしの胸元に落ちる。
目覚めなくていいと思った、二人で、共に眠りにつけるのなら、と。
だが、■■が救ったわたしは、目覚めてしまった。
それが、二回目の別れ。

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