義妹 | ナノ


(ごかいめの世界)


何度も、彼女はいなくなった。
繰り返して、思ったことはひとつ。
彼女と仲良くなるから、彼女が大切だから、私は叫びたいような、泣きたいような、もどかしい気持ちになるのだ。
手をつながなければ、笑顔を見なければ、抱きしめなければ。
きっと、彼女がいなくなることはない、私も辛く思う必要はない。
そう思って、かなりキツく当たった。
話しかけるな、近寄るな、触るな、そして、姿を見せるな。
にも拘らず、少し寂しそうな顔をして、それから、私を兄と慕った。
だが、父が居ないときは私が面倒を見るしかない。

父の居ない、どんよりとした曇りの日だった。
関わりたくないと思っていても、だからと言って、いつものように居なくなれとは思わない。
むしろ、今回こそは、と考えていた。
どうしても外に出なくては行けなくなったとき、留守番させようと思った。
だが、連れて来いと父から言われてしまえば、それに逆らうことはできない。

――にいさまとおでかけ?
  まってて、

声をかければ花が咲くように微笑んだ。
今回もお気に入りは白い白いワンピース。
無言のまま歩き始めれば、■■は小さな足を一生懸命に動かして、ついてくる。
わたしの右にいたり、左にまわったり、嬉しそうに鼻歌を歌っていた。
少し人が多くなったそのとき、腰にぶつかってきたので、振り返る。
其処に居たのは、一度目の世界で■■を殺したそれと、地面に膝をつく■■。
また邪魔しやがって、ふざけるな、と彼女にもう一度ナイフを振り下ろす姿を見て、目の前が真っ赤になった。
近くに居た人間が警察を呼び、その男を取り押さえる。
それを視界に入れながらも、■■の体を抱き起こし、瞳を見つめた。

――ころんで、しまい、ました
  に、さまが…さそ、てくれたのに
  めぃわく、かけて…ごめ、なさい

苦笑にも見える笑みに、首を左右に振る。
また出掛けよう、だから、
わたしの声に、嬉しそうにキュと目を細めてすぐ、■■は脱力した。
それが、五回目の別れ。

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