04
いつだって叶えと思って夢をみる、いつだって結ばれる事を夢見て恋をする到着したアメリカで、氷雨は黒い水着(曰くO型のモノキニ)に着替えていた。
太腿の半分くらいまでを隠すレースの上着を着ている。
思わず無言で見つめれば、少し恥ずかしそうに笑った。
「折角なので、大人っぽくしてみました」
軽く施された化粧は、セレブ風らしい。
とりあえず、行くぞ、と声をかけて、ワンピースを手渡す。
首を傾げながらも、それを着て、俺の後をついてきた。
ついでに声をかけてきた糞チビ共を連れて、ガンショップへ行く。
お嬢ちゃんも撃ってみるかい?と渡された銃を静かに構えて、的をじっと見つめた。
隣で糞チビが転がろうと集中を切らさずに、静かに引き金を引く。
ど真ん中、とまではいかないものの、しっかりと中心近くを撃抜いていた。
が、不満なのだろう、眉を寄せた彼女に、糞ゲジ眉毛が話しかけている。
氷雨が笑顔で対応していて、後ろから抱きしめられるような形で、今度こそ中心を撃抜いた。
「わ、すごい!!ありがとうございます!」
無邪気な笑顔と、それが向けられている男にイラっとして、銃を構える。
が、そこに撃つ訳にもいかず、丁度俺たちを馬鹿にしたやつらがいたので、そっちに撃った。
先ほど、氷雨の笑顔を見ながら口笛を吹いていたので、いいだろう。
銃を購入していると、糞チビ共が砂浜に帰ると騒ぎ始めた。
「じゃぁ、私も一緒に砂浜に行ってますね」
「わかった」
あの二人で帰らせるよりも、氷雨がいた方がいい。
と、思っていたのだが、帰ってきた砂浜で、何故かビーチフットをやっていやがる。
しかも、見学だけかと思ったら、転んで目に砂が入ったらしい糞チビと交代。
上着が邪魔だったのか、糞マネがパレオを取ったのと同じタイミングで上着を脱いだ。
それから、何故か女二人で協力しながらタッチインを決める。
楽しそうに女同士でハイタッチしてるのはまだしも、ワイルドガンマンズの連中とハイタッチはいらないだろ。
軽く舌打ちすると、隣の糞デブが声をかけてくる。
適当に返しているうちに、決勝戦が始まり、何故か、糞マネではなく、氷雨が出ていた。
一度、跳ねるようなショートパスが続き、タッチインされる。
が、その様子をじっと見ていた氷雨は、次のプレーで唐突にジャンプした。
「ラッキー!」
その小さな手にぽん、と当たって、ボールがその手に落ちる。
残念ながらすぐにタッチされて攻撃は止まってしまい、タッチインされたが。
仕方ねぇ、と糞マネに泥門メンツを探すよう伝える。
「あ、まもりちゃん、待ってください!私も行きます」
選手交代で、俺と入れ替わりながら、相手のパス時の特徴をサラッと伝えた氷雨は糞マネに走り寄る。
そのまま、俺たちの視界から走り去った。
牧場に向かうデコトラの荷台で、ふと氷雨を探す。
偶然なのか、意図的なのか、隣に座っている長男に楽しそうに話しかけていた。
長男の方も満更でもないようで、口元に笑みを浮かべながら対応している。
「あ、そうだ、氷雨さん!」
「なんです?」
「氷雨さんって、お料理できるんですか?」
その問いに氷雨は困ったように首を傾げて、それから、俺を見た。
「妖一さん、どう思います?」
「できるだろ。最近同じメニュー食った記憶ねぇし」
最近の食事を思い出しながら答えれば、氷雨は糞マネに笑いながら、できるみたいです、と返した。
同じメニューを作ってないのは、料理してたら記憶が戻ったりするかな、と思っただけですけど。
と、苦笑するように続けた。
他のヤツらから向けられた羨望の視線に少し気分が良くなる。
ケケケ、といつも通りに笑ってみせた。