02
この痛みと同じくらい好きです「だったら、俺が買っても文句は無いだろ?」
俺の一言に驚いたようにした女は、視線を彷徨わせて、真っ直ぐに俺を見た。
「未成年の方のご利用は、保護者の方の許可を得てからお願いします?」
語尾が若干上がって、疑問系で告げる。
その発言に眉を寄せて、見返した。
困ったような、泣きそうな表情で瞳を揺らして、くまのぬいぐるみを抱きしめる。
「代わりに、俺を手伝え」
「手伝い?」
「ああ」
そうすれば衣食住、俺が保障してやる。
そう続けると、隣に立つ警官に視線を向ける。
警官は一度俺を見て脅えたようにしてから、言葉を口にした。
「警察とか、病院にお世話になるよりは、彼を頼った方がいいよ!」
明らかに冷や汗が流れているが、まあいいだろう。
納得しきれないように眉を寄せた女は、それでも、もう一度俺を見る。
ふと、思い立って、ノートパソコンを差し出す。
「打ち込んでみろ」
そう言って渡せば、一発目から、名前とパスワードらしきものを打ち込んだ。
どうやら、手続き記憶は残っているらしい。
それを打ち込んだ自分に驚いたのか、ぱちり、瞬いた。
「多分、名前は氷雨だな」
氷雨は、何度か瞬いて、嬉しそうに笑う。
今までより幼くて、純粋な笑顔だった。
そこからは、名前を知れた喜びか、俺がその手伝いをしたからか、今までの頑なな態度は無くなった。
そのおかげで簡単に氷雨をうちに引き取ることができたのだが、確実に、普通の生活に戻れないだろう。
なにせ、記憶を失った原因の事故を起こしたのが、お忍びできていた他国のお偉いさんだ。
しかも普通にこっちのお偉いさんも一緒に居たらしいってんだから、終わりだな。
適当に戸籍が作られて、それが与えられて、記憶を取り戻しても元には戻れない。
「よろしくお願いします、蛭魔さん」
首を傾げながら言う氷雨に眉を寄せる。
不思議そうな顔をして、すぐに思い立ったように笑う。
「妖一さん?」
「…まあいい」
「それで、私は何を手伝えばいいんでしょうか?」
「妖一さん、本当にこの服装じゃなきゃいけないんですか?」
恥ずかしそうに眉を下げて、スカートの裾を抑える。
ついでに気になるのか、足や腹の部分を見て泣きそうな表情を浮かべた。
「別に、人様に見せられない訳でもねぇだろ」
「見せられるもんじゃないです…」
首を左右に振ってから、俺を見上げる。
潤んだ瞳に白い肌、紅潮した頬。
わかったよ、と肩をすくめるようにして、視線を逸らす。
ほらよ、と渡した上着を素直に羽織った。
しかしそれでもやはり、不満そうな表情を見せている。
はふぅ、と変なため息を吐きながら、その服装のまま正面のソファーまで移動する。
ふわりと甘い香りが舞って、眉を寄せた。
無防備にソファーに座って、妖一さんの香りがします、なんて笑ってみせる。
男として見られていないのか、と軽く唇を噛んだ。