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勝手にヤキモチの対象にしないでください提案に頷いて、おずおずと横になっている。
氷雨姐はにこり、笑みを浮かべて、その頭をゆっくり撫でた。
「高見さん、開始の時間になったら、呼びにきてもらってもいいですか?」
「え、ああ」
「鈴音ちゃんたちは、好きに回っておいで。まだ楽しんでないでしょう?」
「でも、」
「私はいいよ、疲れちゃったから此処で休んでる」
ひらり、ひらり。
さっきまで頭を撫でていた、地面に着いていない方の手をゆっくり振って、氷雨姐は苦笑する。
確かに疲れが見えた。
わかった、と頷いて、セナやモンモンたちと文化祭を巡る。
かき氷を食べたり、演奏を聴いたり、やっぱり氷雨姐も、と思うくらい楽しかった。
暫く遊び回っていると、妖ー兄から連絡が来る。
クイズ大会の場所に集合、とあって、3人で慌てて向かった。
「…氷雨はどうした?」
「多分、進さんを膝枕してます」
「は?」
セナの返事に妖ー兄の顔が歪んだ。
ついでにムサシャンとモンジもすごい顔をしてる。
クリタンも聞き間違いか、とでも言うように私たちを見た。
まも姐とユッキーがまさか、と顔を見合わせる。
その反応に、唇を尖らせた。
「アハーハー!嘘はいけないよマイシスター!」
「嘘じゃないって!王城の人にも聞けばいいでしょ!」
あっさり嘘と決めつけた馬鹿兄貴にローラー攻撃を仕掛けて、不満だと顔に現す。
セナも本当です…と弱々しく告げた。
「早く会場に行って、氷雨さんを迎えに行かないとッスよ」
モンモンが続けて、渋々と納得したらしい彼らは、むつりと黙る。
私に、妖ー兄がぽい、と携帯を投げる。
そこにあったのは、黄金世代の王城との対戦結果。
全員で見てから、練習場に向かった。
と、何故か、練習場の救護テントに人が集まっている。
なんだー?と思ってそこに向かうと、つまらなそうな表情で氷雨姐が座っていた。
「氷雨姐ー!」
足を組んで、隣の机に肘をつき、頬杖をついていた氷雨姐は、私に気がついてにこり、笑う。
何故か、その手元には飲み物やら食べ物やらが貢ぎ物のように置いてあった。
軽く手招きされて、近寄る。
「鈴音ちゃん、あーん」
「へ?あーん?」
差し出されたお団子をパクリと食べた。
美味しい〜と告げれば、氷雨姐は目を細めて私の頭を撫でる。
それから、お団子についていた紙に目をとして、名前を呼んだ。
「遙、でいいのかしら?」
「は、はい!」
集まっていた人の中から、1人の女子生徒が現れた。
彼女は、近くの人に自分の携帯電話を渡して、氷雨姐の隣に座る。
口元に手を当てた氷雨姐は、考えた後、その子の頬に触れた。
そして、自分の方に向けて、額をこつんとあわせる。
その至近距離で、氷雨姐は優しく微笑んだ。
「熱は、無いようね?」