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それただの惚気ですよね氷雨姐が、まさかの4位でナース服を着た。
けど…ふと、自分の胸を見下ろす。
胸の部分のボタンが悲鳴を上げていて、ウエスト部分は丁度ぴったりらしい。
足は少しキツいらしくて、ラインがはっきりしている。
ニーハイと靴も白で、髪はサイドだけ残して簡単にあげて、帽子?も被っていた。
ただ、それを着ている氷雨姐の表情は、死んでいる。
「氷雨姐…何であんなに似合ってるんだろう」
「鈴音ちゃん、言わないであげて」
まも姐にそういわれて、口を噤んだ。
もう帰りたい、と氷雨姐の口が動いているのを見た。
そのあと、解散になったんだけど、氷雨姐と一緒にいた偽進さんは一気に王城生に囲まれて。
何故か、氷雨姐が本物にお姫様抱っこされて救出されてた。
ちなみに氷雨姐は、顔を覆って、もう誰か殺してくれと冗談を言っている。
「というか、清十郎さん、このままどこに行くつもりですか。降ろしてくださっていいのですが」
王城の公開練習している場所に到着して、氷雨姐は何度目かの言葉を冷静に告げた。
暫くつれ回されたこともあって、かなり疲れているようだ。
え?私?もちろん後ろから隠れてついて行ったよ!
でも、全く降ろしてもらえる様子はなくて、完全に困った顔をしている。
「進、そろそろ着替えて…氷雨さん?」
眼鏡の人が声をかけてきた。
氷雨姐はもう疲れた、と言う顔をして、腕の中で軽く頭を下げる。
「もう私は疲れました。限界です」
「え、ちょ、氷雨さん?!進、お前何したんだ…?」
「いえ、清十郎さんはいいんですよ、まあ、抱き上げてるのやめてくれればもっといいんですけど」
それよりも、白が押し寄せてくる恐怖と、シャッター音のトラウマが…。
と空笑いをする氷雨姐。
「大丈夫ですか」
「清十郎さん、ありがとうございました。でも、本当に降ろしてくださっていいんですが」
「離したくありません」
真っ直ぐに氷雨姐を見て告げられた言葉に、目を見開く皆。
王城も泥門も、関係なく…というか、むしろ王城生の方が驚いている。
ざわざわと聞こえるのを聞くと、あの進が、とか、恋愛に興味なさそうな奴が、と聞こえた。
ぴん、と前髪のアンテナが立つ。
が、がしりとセナに取り押さえられた。
これ以上何か言ったら氷雨さんが限界突破しちゃうから、と言われる。
むー、と思いながら、視線を向けるだけにした。
「でも、これから練習でしょう?ね、降ろしてください」
「…まだ練習には時間があります」
「……高見さん、人目につかない場所あります?此処でこうされるのもう本当に、どうにかしたいです」
結局折れたらしい氷雨姐が、その高見さんの案内で、準備中の練習場に入って行く。
ひょこひょことついて行くと困りきった様子で、何とも言えない渋い表情を浮かべて提案していた。
練習場の中でも、端っこの方で、木でよく見えない辺りだ。
「ハグか膝枕…どっちかに変えてもらえませんか」
「膝枕…?」
「座った私の太ももを枕に、清十郎さんが寝っ転がるんです、知りませんか?」
その言葉に、やっと降ろしてもらえた氷雨姐はホッとしたように息を吐いてた。
すぐにその辺りを見回して、地面に座り込む。
が、服がぴったりすぎるのか、足を崩して、反対側に体を倒して、手をついた。
足を崩した所為か、それとも、服がぴったりな所為か、氷雨姐の太ももの露出が上がる。
「で、ここに頭を置いて、あっちに足で清十郎さんが寝るのが膝枕です」
説明して、どうします?と首を傾げた。