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首をしめる喫茶店でカスと会った。
お互いに挑発しながら、話を進める。
ちょっと軽い質問を、と聞こえたときだった。
「リコちゃん!」
「え、あ!氷雨さん!!」
その声にそちらを見る。
ふわり、と柔らかく笑う女。
正面のカスも驚いたように目を見開いている。
「妖一さんに阿含さんもいらっしゃったんですね」
にこり、俺たちに向かって笑う。
女同士隣に座って、俺を見て、首を傾げた。
「阿含さん、受け取っていただけました?」
「あ?」
「この間のお礼です」
他に何も渡していませんよ、とくすくすと笑う。
今までの優しい俺ではないにも関わらず、全く態度が変わらない。
その反応に眉を寄せて、見返す。
男でも脅えることのある凶悪と言われる顔だ。
しかし、きょとん、と俺に視線を向け続ける表情に怯えはない。
「そんなに眉間に皺を寄せると、格好いい顔が台無しですよ?」
「氷雨、」
咎めるように女の名前を呼んだカスに、その声にはぁい、と素直に返事をする女。
「あ、そうです。リコちゃん、私はなんで呼ばれたんでしょうか?」
「実はですね、読者からこんな感じで要望があったんです」
言いながら、何枚かのはがきを取り出す。
それを見ると、そこには、
・泥門vsNASAの時にいたスーツの女の人って誰なんでしょうか?
・泥門の一員として動いている女性について知りたい。
・泥門の試合を中心に撮ってる、あの女の子って彼氏いるの?
・抽選会場で王城の進に抱き上げられていた女性のプロフィールが知りたい!
・桜庭くんと仲良さそうに喋ってる年上の女性は何者なの!?
「で、氷雨さんに許可をもらってから、質問事項を募集したら、なかなか多くて…」
「私が答えられることなら何でもお答えしますね」
驚いたように、それでも何処か嬉しそうに笑って、飲み物を注文する。
それから、先にお二人のを終わらせますか?と首を傾げた。
一瞬、カスと視線を交わす。
珍しく一致したようで、無言で、ちゃんと椅子に座りなおした。
正面でも銃を左手に持ち替えている。
「なるほど、私のを先に終わらせる方がいいんですね」
動きで判断したのか、女は笑う。
「じゃぁ、リコちゃんは妖一さんのお隣にどうぞ」
「え、え…、」
「ふふ、阿含さんのお隣の方がいいかしら?」
「ヒル魔さんのお隣に座らせていただきます」
くすくすと笑みを零しながら、女は俺の隣に座る。
サイドの髪を軽く耳にかけて、目を細めた。
「どんな質問があるんでしょうか?」
「ええと、ではまず簡単な質問から、簡単なプロフィールを教えてください」
女はぱちりと、瞬いて、困ったように微笑んだ。