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誰と繋がっているのかわざわざ大会の抽選会に連れて行かれた。
面倒くせぇと思いながら向かった会場で、一人の女が目の前を通り過ぎた。
特に可愛らしい訳でもなく、綺麗な訳でもない。
化粧で見れる顔にはなっているが、そのレベルだ。
だが、妙に気になった。
ならばスタイルか、と上から下へ、下から上へと視線を走らせる。
細い訳でも、抜群にいいスタイルな訳でもない。
思わず舌打ちをする。
気にかかった理由がまるでわからない。
「どうしたんすか?」
「なんでもねぇよ」
一休の言葉に返しながらも、その姿を追う。
と、カス共と話しているのが見えた。
なるほど。
カスと群れている女だったから気になったのか。
そう思って、視線を外す。
「…、」
「どうした?」
「ん、何でもないよ」
視線の端で嘘くさい笑顔を浮かべた女に苛立った。
抽選の時に気がつく。
会場の中にあの時のチビカスの存在がある。
「あ、そ〜か。アイシールドがどうとかウザいの、あいつか〜」
なるほど、と思いながら攻撃を仕掛ける。
一瞬で避けた動きに、ぶっ殺すと決めた。
と、その後ろにいたあの女が、脇腹を抑えながら眉を寄せている。
歯を噛み締めているのが見えた。
が、カス共に声をかけられても、大丈夫、と笑って手を振る。
「馬鹿が、大丈夫じゃねぇだろ。痛み止めは?」
「か、ばん、」
眉を寄せ、目を閉じて苦しんでいる姿は、ぞくりとした。
プチッと潰すのもいいが、苦しんでいる様を見るのも、いいものかもしれない。
女の鞄から取り出された薬を、口元に運び、水を飲ませてやっている。
「…外、出てる」
「一人で大丈夫か?」
その問いかけにこくりと頷いたのを見て、追いかけた。
どこに行くのかと言われたが、そんなもの無視だ。
会場を出て、へたり込みそうになっている女に手を貸す。
サングラスを外して、笑顔を浮かべた。
「大丈夫?ソファーでいいかな?」
近くで見ると、意外に汗をかいているのがわかった。
痛みによるものだろう、と判断して、とりあえずソファーに運んでやる。
簡単に肩を貸してやっただけなのだが、それすらも遠慮がちだった。
ソファーに座らせてやると、脇腹を抑えながら、荒い息を吐く。
前屈みになる女の前に座っていると、丁度谷間が見えた。
そこで、案外サイズがあると気がつく。
とりあえず、その場で暫く観察していると、痛みが治まってきたのか、体が起き上がった。
鞄からハンカチを出して、首許を拭った女は、作られた笑顔を浮かべる。
「ありがとうございました」
「いいって、いいって。でも、どうしたの?」
困ったように眉を下げながら、傷痕が引き攣ってしまったみたいです、と首を傾げた。