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「サガさん、休憩にしませんか?」
執務室に氷雨の声が響く。
その声にペンを置いて、残った書類を確認してから、そうだな、と頷くサガ。
その反応にやはり仕事人間だと再確認した彼女は仮眠室に誘う。
サガが扉を開けると、ふわり、といい香りが漂った。
テーブルにはお茶請けとティーカップが用意されている。
「これは?」
「簡易お茶会の準備です」
くすくす、と笑いながら、彼女はサガを席に案内する。
そのままティーカップをもって、キッチンに立った氷雨はゆっくりとした動きで、お茶を入れた。
穏やかに微笑みながら、カップをサガと自分の前において、サガの正面に腰掛ける。
「紅茶、か…?」
「ハーブティーですよ。休憩はリラックスしなくちゃ意味ないでしょう?」
ふふ、と目を細める彼女に、そうだな、と柔らかな表情を浮かべる彼。
ゆっくり、紅茶を口に含む。
彼女はお茶請けに手を伸ばしていた。
「そういえばサガさん、ちゃんと寝てますか?」
「突然なんだ?」
「カノンさんが愚痴ってましたよ?」
その言葉にむ、と眉を寄せる。
彼の表情が面白かったのか、クスクスと笑って、続けた。
「神官に、『今日はお早いお帰りですね』って言われたそうです」
「…、」
誤摩化す様に、もう一度紅茶を口元に運ぶサガ。
あからさまな様子に堪えきれないという様に笑う氷雨。
暫く無言を貫いたサガだったが、小さく、反論する。
「氷雨も、人のことは言えまい?」
彼が首を傾げ、意地悪げに笑えば、その珍しさからか、氷雨は何度か瞬く。
それから苦笑して、そうかも知れませんね、と笑った。
優しい光が差し込む中、この穏やかな時間のために頑張ってくれた聖闘士たちに想いをはせた二人だった。