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こんな華やかな場で、不吉な言葉は口に出来ませんから。
と巫山戯たように笑えば、そうかよ、と不機嫌そうな声。
「それで、何のようですか?」
「シュラが呼んで来いってうるせーんだよ」
行くぞ、と手を差し出された腕に添えて、背筋を伸ばす。
ふぅん?と面白そうな声を上げる青年に、なんです?と首を傾げた。
「慣れてんじゃねぇか、と思ってな」
「ん、まぁ…何度か来てるから、慣れないけど」
顔をしかめると、ふわり、と笑うデス。
驚いて、さらに、その目立たないだけのイケメン具合に、頬が染まる。
へたれというか、やられキャラのために三枚目的な印象が強いが、彼の顔はかなり整っているのだと再認識した。
赤くなった頬をからかわれる、と思ったが、予想外に、声がかからない。
あれ?と思いながらおずおずと見上げると、口元を覆って目を逸らすその姿。
「ばか、何照れてんだてめぇ、こっちまで照れるだろうが、」
「だって、あんな顔で笑うのが悪いでしょ、」
言いながら目を逸らす。
恥ずかし過ぎて彼のことを直視できない、というのが正しいのだが。
カーペットに足を取られて、転びそうになる。
巻き込む、と思って、手を離した。
「っと、あぶねーなぁ」
驚いたように私を抱きしめる腕に、目を見開いて、息を一瞬止める。
何でもない振りをして、でも、顔を見ないように。
「ありがとう、」
「どういたしまして、つーか、何のために腕掴んでんだよ」
転けそうになったときに放したら意味ねぇだろーが。
言って、私の腰に手をまわす、吃驚して顔を見ると、いつものように悪戯っぽい顔。
「何赤くなってんだよ、俺に惚れたか?氷雨、」
「…危なく惚れそうになったわよ」
ばか、と囁いて、近くまで来ていたシュラに手を伸ばす。
後ろで、真っ赤になっていたイタリア男がいたなんて、私は知らない。
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あとがき
前サイトで、那々さまに捧げたものです。
移転の際、デスマスクの呼び名を修正しました。