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「全く…」
「毎回、そういいながら結んでくれる君には感謝している」
「なら、行動で現して下さい。仕方のない人ですね」
しっかり襟もとも確認して、くるくると、縛る。
「スーツなど、着慣れんのだよ」
「だからって、毎回私がいる訳じゃないんですからね?」
きゅ、と首許に寄せて、もう一度見る。
問題無し。
にこり、笑って格好いいですよ、と胸の辺りを叩く。
うむ、と頷く彼に、少しだけ苦笑して、さおちゃんを見る。
「やはり、お姉様が来て下さったのですね」
「うん、今日の分の私の仕事と、今まで溜まった仕事を終わらせてくれるそうなので」
「っげ、」
「あ、あと、よく読んでないと思いますが、私に手料理をごちそうすること、っていうのも書いてありました」
「マジかよ、」
「後で見せますよ、大丈夫です」
にこにこ、と笑ってみせれば、諦めたように了解、と告げる彼。
テレポーテーションで懐かしの城戸邸に飛び、懐かしい部屋に思わず、笑う。
思いついて、さおちゃんを見る。
「さおちゃん、」
「ええ、明日はどうぞ、顔を見せてあげて下さい」
「ありがとう」
考えていることが伝わったことにも嬉しく思って、小さく頭を下げる。
ふふ、と笑ったさおちゃんがさあ、行きますよ、と声をかけ、全員でパーティー会場に向かう。
ついたそこは別世界だった。
付き合いと言うか、仕事の一環で、参加したことはあったが、私は慣れない。
ああ、何で私は此処にいるんだっけ、なんて遠い目をしたくなる。
「氷雨?」
「なんですか、ディット」
「…んだよ、それ」
「流石に、貴方の名前は目立ちますからね」