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言えば、う、と呻いたソイツ。
が、食らいついてくる、ということは、本気で私に頼みたいらしい。
それにしたってなんで私なんだか。
「その日の私の仕事はどうするつもりなんですか?」
「…俺がやる」
「ふぅん、じゃぁ、誓約書とか書いてもらっても良いですか?」
「ああ!」
嬉しそうに顔を上げて、立ち上がろうとするが、足が痺れた所為で膝から崩れ落ちた。
膝を強打したらしい、痛そうだ。
「痛いの痛いの飛んでいけー、とかやって差し上げましょうか?」
「頼むから、追い打ちだけは辞めてくれ…」
誓約書として、自由に使っていいと言われた羊皮紙にガリガリと羽ペンで内容を書く。
羽ペンとそれを渡して、名前を書いてもらい、更に拇印を押してもらう。
それをくるくると巻いて、私の鞄に入れる。
「では、当日はよろしくお願い致しますね、デスマスク様」
にこり笑って、手を振れば、ありがとよー、という声が聞こえた。
そして、当日。
着飾った自分にため息を吐きながら、相方の到着を待つ。
ノックとともに、部屋にやってきた彼は、黒のスーツにピンクのYシャツをあわせていた。
衝撃の組み合わせだが、ニヒルな笑みを浮かべるイタリア人に異常な程マッチしている。
信じられない組み合わせでも着こなすスタイルの良さ、だからこそセンスがいい、となるのかもしれないが。
「へぇ、中々じゃねぇか」
「そちらこそ、よく似合ってますよ、デスマスク様?」
首を傾げて、にっこり笑ってみせると、肩をすくめられる。
そのまま手を差し出され、素直にとった。
が、私は苦手なのだ、こういうの。
はぁ、と肩をすくめて、彼に連れられて、集合場所に向かう。
そこにはさおちゃんと、シャカ、シュラ、ディーテ、に着飾った女性二人。
数歩近づいてきたシャカは、私にネクタイを差し出してきた。
はいはい、と軽く返事をして、それを彼の首にかける。