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「いいんじゃない?私も毎回毎回面倒だし」
ねぇ?と言いながら肩にかかっている水色の髪を口元にあった手で払う。
その目線の先にはシュラ。
辿った先で、ばちり、と目が合った。
「俺の髪も頼めるか?」
…だと、思ったけど!
いやいや、嘘だろ、無理無理、あり得ん、人様の髪を切るなんて怖すぎる。
まあ、やったことはあるけど。
色々と押し切られたことはあるけど。
「ダメか…?」
「…その聞き方はズルいと思うんだけれど、どうだろうか」
「つまり、OKだと」
「言ってない、ほんと、人の髪とか、無理」
変な片言になりながら、首を左右に振る。
が、仕方ないヤツだとでも言いたげな視線を向けられた。
えええええ、なんでー、なんて思わないでもないのだけれど。
「失敗しますよ?」
「構わねぇだろ、どうせシュラだし」
「何を言っているんだい?君もだろう?」
ディーテが、タルトを口に運びながら言った。
…美味しそうだ。
皿の上のスイーツに手を付ければ、美味しさに思わず目が細くなる。
冷めてきてしまった紅茶も、未だに薫っていて、少し気分が落ち着いた。
「ていうか、みんな器用なんだから、私である必要はないよね?」
「今まで私がシュラの髪を切ってたんだよ」
ついでに言うなら、デスマスクの髪も時々、と紅茶を優雅に飲みながら笑う。
マジですか、と思っていれば、デスがアフロの髪は俺が切ってる、と肩をすくめた。
じゃあ、今のままでもいいじゃないか、なんて思わないでもないんだが。
「で、何で其処に私が含まれるんですか」
「そんなの、男に髪切られるより、女の方がいいからに決まってんじゃねーか」
デスの言葉に思わず眉を寄せる。
そこら辺の女性より美しいディーテに髪を切ってもらっておきながら、何を言っているのか…。
が、そう思ったことがわかったのか、ディーテが私を見て微笑む。
…何か言いたいことがあるのかな?なんて言われても…口を抑えて、首を左右に振った。
「氷雨、」
「…わかったよ、でも、本当に、失敗しても知らないからね?」
私が思いっきり眉を寄せて告げれば、三人は構わない、と笑う。
無駄に疲れてしまって、背凭れに寄りかかった。
仕方ないな、とでも言いたげな顔を向けられて、更にスイーツを差し出される。
キラキラしたそれに一度息を吐いてから、気を取り直して口角をつり上げた。
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あとがき
前サイトで、麻生さまに捧げたものです。