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「なんてことがあったのぅ…」
ずず、と音を立てるようにして童虎がお茶を飲む。
その隣でシオンがうんうん、と頷いた。
急須を持った氷雨は、困ったように笑って、自分用の緑茶を湯のみに注いだ。
「あんな聞き方をするお二人にも、非はあると思いますよ」
彼女は少し口を尖らせて、不満そうな顔をした。
「それで?黄金聖闘士たちをどう思っておるのだ?」
そんな氷雨などお構いなしだというようにシオンは興味津々な表情で告げる。
女子高校生ですか、と小さく呟いた氷雨は一度大きく呼吸をしてから、わかりました、と笑った。
まず、ムウは子育てしていますからね、かなりポイントが高いかと。
アルは…そうですねぇ、男性として一番魅力的だと思いますよ。
サガさんは、なんというか…とりあえずワーカホリックをどうにかするのが先決ですね。
カノンさんはそうですね、普通にモテるタイプだと思いますけど…どうなんでしょう?
それから、デスは…無敵じゃないですか?最近真面目だし、料理もできるしで…まあ、ちょっと怖いですけど。
とりあえず、其処まで一息で言って、にこり、微笑んだ。
童虎が確かにのぅ、と頷いて、シオンが眉を寄せた瞬間、彼女は続けた。
リアはアレでも、エスコートの仕方は知っていますし、あの純情すぎるところを抑えられればいいんじゃないですか。
シャカは…何とも言えませんが、本人曰く、妻を持つ気はあるらしいとか。
そうですね、童虎さまは魅力的だと思いますよ、ただ、もう少し都会には慣れた方がいいとは思います。
ミロは純粋にモテますからね、デスとは違った意味で…心配いらないと思います。
次は…ああ、アイオロスさんですね、彼はよくわからないですけど、どうとでもなります。
投げやりに言い切った彼女は首を左右に振った。
アレだけ腹黒ければ、女の人をコロッと掌で転がせるだろう、なんて思っても決して口にしない氷雨。
言ったが最後、何処からか聞きつけてきた彼が素敵な笑顔を向けてくれることだろう。
んー…と首を傾げて、指を折った彼女はふむ、と頭を上下させて、次は、と笑う。
シュラは、顔怖いですけど、それさえクリアできればモッテモテですよ、何故か侍道っぽいですが。
えっと…カミュは…弟子に対する愛情に引かない人、もしくは弟子の彼らに母親的感情を抱ける人なら、上手くいきそうです。
ディーテは美しいですからねぇ…まあ、彼なら上手く動くんでしょうけど…モテますし。
氷雨はそう言って肩をすくめた。
それから緑茶を飲んで、ふぅ、とため息を吐く。
「それにしても…もう、半年も前なんですよね」
「そうじゃの」
童虎と氷雨はほのぼのと会話をしていた。
が、ひとり解せぬ、という顔をしているシオン。
「何故だ、何故私については何も言わぬ」
「え?だってシオンさまは黄金聖闘士じゃないでしょう?」
きょとん、と首を傾げて、でも言うとしたらそうですねぇ…と反対側に頭を移動させた。
ぽん、と手を叩く。
「人間的な深みはありますが、少し短気な印象を与えますので、笑顔でいればいいと思います、顔はとても整っているんですから」
まあ、一般論としての、私の意見ですけど、彼女は目を細めて、5ヶ月前と同じようにいいお茶請けがあったんです、と部屋を出て行った。
氷雨がいなくなった部屋で、シオンはぽつり、と零した。
「つまり、なんだ」
「まだまだ、眼中にないということじゃな」
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あとがき
前サイトで、神乃星さまに捧げたものです。