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「仕事に支障の出るような関係ではない、と思っているのですが…何か問題が?」
真剣な表情で、彼女は二人を見る。
氷雨の中で、黄金聖闘士は仕事の同僚、もしくは上司という認識しかない。
勿論、友人だと思っている相手もいるものの、それですら、彼女の中では決して対等な関係ではない。
未だ、出会って半年と経っていない相手だ。
仮令、彼らから依存に近い信頼を寄せられていても、彼女を繋ぎとめる何かではない。
「…紫龍は、どうじゃ?」
「紫龍君、ですか?彼は私の大切な存在です。自分に厳しいけれど、他人に強要することはなく、だからこそ、辛い選択を選んでしまう」
唐突に滑舌になった氷雨は最後に少しだけ淋しそうな笑顔を浮かべた。
私じゃ、何もしてあげられなくて。と独り言のように続けられるそれは、黄金聖闘士たちの氷雨への想いに近いもので。
「っ、他の、他の小僧どもはどうだ?」
「星矢君は、誰よりも平等です。でも、内側に入れば誰よりも甘やかしてくれます」
それに甘えてしまうのはいけないとわかっているんですけど。
苦笑を浮かべた彼女は他の3人についても寂しそうな笑顔で語った。
彼女にとって、青銅の5人は他の誰かに比べることができないくらいに大切なのだ。
「デスマスクたちはどうなのだ?」
仲がいいだろう?と首を傾げたシオンに氷雨は笑う。
一度頷いて、メガネを押し上げた。
「仲はいい方だと思っています。食事に誘ってくれたり、買い物に出掛けたり、」
私の友人だと思っています。
続けられた言葉と浮かべられた笑顔は、嬉しそうで。
そうか、と目を細めたシオンと童虎。
「あ、そういえば、紅茶によく合うお菓子貰ったんです」
そう言って、席を立ち、扉から出て行く。
「つまり、なんだ、」
「そうじゃのぅ…眼中にないと」
「…それはそれで寂しいんだが」
「全てはこれからじゃ」
「まあ、仕方あるまい」