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「さて、と、時間は大丈夫?」
首を傾げたお姉様に時計を見ると、予想外に時間が経っていた。
が、大丈夫です、と告げる。
じゃ、最後、行こうか、と私の手を取って、二人も促した。
「お支払いは…?」
「さっき、お化粧直すついでに払ったから大丈夫よ」
ふふ、と笑うお姉様に何か言おうとするが、ほら、行くよと手を引かれて、何も言えないままついて行く。
到着したのは、少し広めの公園。
「3、2、1、」
腕時計を見ながらカウントをするお姉様。
その声が、ゼロ、と告げた瞬間、目の前に水が上がる。
水の芸術、というのだろうか、見惚れて何も言えなくなっていると、お姉様がそっと私の頭を撫でた。
芸術は20分程で終わる。
にこり、微笑んだお姉様は屈んで、わたしと視線を合わせる。
「今日は楽しかった?」
「はい!とても、」
ぎゅう、と抱きついて、頷いた。
お姉様は、一瞬固まって、すぐに私の頭に手を乗せてくれる。
表情は見えないけれど、きっと、いつものように、少し幼い綺麗な笑顔で笑っているのだろう。
「あの、お姉様、」
「なぁに?さおちゃん」
帰り道、私は隣をゆっくりとしたペースで歩くお姉様に声をかけた。
甘く、恋人に向けるような笑顔で、首を傾げる様子に、繋いでいた手をギュ、と握る。
「また、連れて行ってくれますか?」
まだ、本当は終わりにしたくない。
そう思うが、私も、彼女も時間に追われた生活をしている。
もし、断られたら、と緊張でドキドキと痛いくらいに心臓が鳴った。
私の言葉にふふ、とお姉様は楽しそうに笑う。
「勿論」
眩しい程の笑顔は、悪戯っ子のようで、なのに、とても綺麗で。
「今度は、リアと童虎さま無しで、ね?」
魅力的な女性、というのは、きっと、お姉様のことなのだ。
…ヘタな男には、渡せません。
なんて、前々からもっていた考えをもう一度自分に言い聞かせて、私は大きく頷いた。
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あとがき
前サイトで、闇猫さまに捧げたものです。