正義・番外編 | ナノ



4
しおりを挟む


「さて、と、時間は大丈夫?」

首を傾げたお姉様に時計を見ると、予想外に時間が経っていた。
が、大丈夫です、と告げる。
じゃ、最後、行こうか、と私の手を取って、二人も促した。

「お支払いは…?」
「さっき、お化粧直すついでに払ったから大丈夫よ」

ふふ、と笑うお姉様に何か言おうとするが、ほら、行くよと手を引かれて、何も言えないままついて行く。
到着したのは、少し広めの公園。

「3、2、1、」

腕時計を見ながらカウントをするお姉様。
その声が、ゼロ、と告げた瞬間、目の前に水が上がる。
水の芸術、というのだろうか、見惚れて何も言えなくなっていると、お姉様がそっと私の頭を撫でた。
芸術は20分程で終わる。
にこり、微笑んだお姉様は屈んで、わたしと視線を合わせる。

「今日は楽しかった?」
「はい!とても、」

ぎゅう、と抱きついて、頷いた。
お姉様は、一瞬固まって、すぐに私の頭に手を乗せてくれる。
表情は見えないけれど、きっと、いつものように、少し幼い綺麗な笑顔で笑っているのだろう。


「あの、お姉様、」
「なぁに?さおちゃん」

帰り道、私は隣をゆっくりとしたペースで歩くお姉様に声をかけた。
甘く、恋人に向けるような笑顔で、首を傾げる様子に、繋いでいた手をギュ、と握る。

「また、連れて行ってくれますか?」

まだ、本当は終わりにしたくない。
そう思うが、私も、彼女も時間に追われた生活をしている。
もし、断られたら、と緊張でドキドキと痛いくらいに心臓が鳴った。
私の言葉にふふ、とお姉様は楽しそうに笑う。

「勿論」

眩しい程の笑顔は、悪戯っ子のようで、なのに、とても綺麗で。

「今度は、リアと童虎さま無しで、ね?」

魅力的な女性、というのは、きっと、お姉様のことなのだ。
…ヘタな男には、渡せません。
なんて、前々からもっていた考えをもう一度自分に言い聞かせて、私は大きく頷いた。

*********
あとがき
前サイトで、闇猫さまに捧げたものです。


[前へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 本編に戻る ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -