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ふふ、と笑って、数歩近づく。
それから、手を差し伸ばした。
その手がデフテロスさんの頬に触れる。
「本当に、守ってくれます?」
「…ああ!」
「約束ですよ?」
首を傾げて、デフテロスさんが頷くのを見てから、手を離した。
一度、深呼吸する。
聖域に行ったときに、もう、帰れないと覚悟を決めた。
勿論、帰れるかもしれないが、会えなくなることもあり得ると、自分に十分に言い聞かせていた。
それが、今役立つなんて、と小さく笑って、振り返る。
「私、残ります」
「お姉様!?」
「異界のアテナよ、」
デフテロスさんが隣で声を発した。
褐色の肌に抱きしめられる。
皆さんにすごく見られているのが照れるのだが、彼の手からは抜けられそうにない。
「氷雨は、俺が命に代えても守り抜くと約束しよう」
「…で、デフテロス?」
驚いたような声でアスプロスさんが声をかける。
その声に、真剣な声色で、彼女を幸せにできるのは、俺だけだ。と自信に満ちた様子で答えた。
顔が真っ赤になるのがわかるが、まあ、間違ってないかも、とにやけそうな口元を抑える。
「…わかりましたわ」
「さおちゃん、」
「お姉様、どうか、幸せに」
「…ありがとう」
少しだけ寂しそうに笑ったさおちゃんたちとの繋がりが、すう、と消えた。
ぎゅう、と抱きしめられて、額に口付けられる。
「氷雨、」
「なんですか?デフテロスさん」
「…後悔はさせない」
「期待してます」