正義・番外編 | ナノ



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翌日、目が覚めて、サーシャちゃんと話をして、結果、聖域においてもらえることになった。
…200年以上昔だ、正直、日本に行ったところで私は何もできない。
と、いう訳で、書類を手伝っていたという私の腕を買ってくれた。
それから、この聖域での生活は一人じゃできないだろう、とデフテロスさんが補助を名乗り出てくれたこともあり、双児宮でお世話になっている。

「氷雨、大丈夫か?」
「ええ、これくらい問題ありませんよ」

隣に座って、私の手元を覗き込むデフテロスさん。
私の仕事は日によって違うのだが、今日はデフテロスさんの終えた書類を並び替えと確認だ。
そんなに難しい仕事ではないし、問題なくこなせている。
が、心配性なのか、定期的に私を見て、不安そうに問いを口にする。
若干、そんなに不安なのか、と自信がなくなりそうだが、彼のおかげでこの聖域にも慣れてきたのは事実だ。

「そうか」

八重歯を見せて、照れたように笑うデフテロスさんは正直、癒される。
カノンさんは兄貴分で、気にかけてくれていたが、癒し、と言うより頼りになる、だった。
だからこそ、新鮮で、この職場が、嫌いじゃないのだろう。
キラキラとした笑顔に恥ずかしくなって、無理矢理笑んでから、紅茶入れますね、と席を立つ。

「氷雨、」
「なんですか?」
「…俺が、守るから」

楽しそうに、少しはにかみながら言われた言葉に何度か瞬いて、目を逸らす。
顔が赤くなるのがわかって、そのまま、踵を返した。
きれいな仮眠室に入って、ばん、と扉を閉めて、座り込む。

「…天然タラシとか、ふざけんな」

両手で頬を抑えた。
熱くなってしまったそれを冷やしたいと思うも、目の前に、にやりと笑うマニゴルドさんがいては、何もできない。

「お前さぁ…」
「何も言わないでもらえますか、自覚してます」
「へぇ…、の、割には、何もしねぇんだな」
「…小心者ですから」

苦笑して、立ち上がる。
それから、一度深呼吸してから、紅茶を入れるため、お湯を沸かし始めた。
火をつけるのに手間取りそうだと思ったが、マニゴルドさんのおかげであっさりと終えられて。
入れた紅茶を持って、扉を開けようとしたそのときだった。

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