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「氷雨、準備はできた?」
「はーい、大丈夫です」
扉を開けると、にこり、綺麗に笑ったディーテが立っている。
Yシャツにズボンという、何ともシンプルだが、小物使いがうまいのか、それとも元々の顔立ちか。
髪も1つくくられて、肩口に流されている。
かなり、格好いい。
「可愛いね」
「…ありがとうございます」
眉を下げて笑えば、楽しそうに笑った彼は、行こうか、と私を抱き上げて、聖域から出る。
それから、テレポーテーションで大きな街にやってきた。
普段買い出しに出るところとはまるで異なり、思わず、キョロキョロと見てしまう。
「ふふ、珍しい?」
笑いながらかけられた声に、恥ずかしくなって、足元を見つめる。
くすくすと笑う声が聞こえ、ぷくと頬を膨らませた。
「さ、行こうか」
私の不機嫌そうな顔を見て、誤摩化すように私の手を取り、歩き出す。
ゆっくりした歩調や加減された歩幅に有り難く思いながら、彼の隣を歩いた。
…まあ、隣に視線が集まることぐらいわかっていたよね。
そんなこと気にならないのか、ディーテは此処だよ、と微笑む。
「えっと?」
「香水が欲しいって言ってただろう?」
ああ、そんなこと、言ったような気がする。
恒例になった夕食の席でぼそっと言ったことだったから、覚えてくれているなんて思わなかった。
嬉しく思って、ありがとうございます、と見上げる。
気にしないで、と楽しそうに笑った彼はそのままエスコートしてくれた。
「どんな香りが好みだい?」
「んー、柑橘系も甘いのも好きですけど…」
首を傾げながら、1つ香りを嗅ぐ。
…うわ、苦手なタイプだ。
「この感じはあまり好きじゃないです」
「…ああ、あまり氷雨には合いそうにないね」
軽く嗅いでから、首を左右に振る彼。