正義・番外編 | ナノ



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夏祭りは中々に混んでいた。
はぐれる心配はないが、歩きやすいかどうかで言ったら、かなり歩きにくい。
まあ、両側ががっちりくっついてきているのもあるだろうが…。
ちなみに、私の両側はどうやらローテーション形式にしたらしく、今は瞬君と氷河君だ。
瞬君は私の腕に彼女よろしく、しっかり抱きついており、氷河君は何故か、恋人繋ぎ。
いや、私は構わないけど、彼らは色々と良いのだろうか?先ほどからちょくちょく同級生とすれ違っているようなのだが…。
しかも、女の子数人に一緒に回ろうよ、と誘われていたりもしていた。
…本当に良いのだろうか?

「星矢君、いいの?さっきの子たち」
「いいんだって、俺は氷雨さんと一緒に回りたいんだから」

に、と口角をつり上げて笑う星矢君にそう?と首を傾げる。
と、今度は隣の瞬君が女の子に囲まれていた。
…それでも、私は離してくれないんだね。

「だから、僕は氷雨さんと回りたいんだ」
「なんで、おばさんじゃん!」

…まあ、そうですよね。
中学生からしたら、成人して、社会に出てる私はおばさんですよね。
なんて、私自身はどこか他人事のように物事を静観していたのだが、瞬君には言っちゃいけなかったらしい。

「氷雨さんがおばさん?君たち目が悪いんじゃないの?」

にっこり笑って、私の手を引く。
行こう、と不満そうに歩き出した彼に引っ張られるように私と氷河君は歩き始めた。
…が、なんだろう、何か呪われてるんじゃないかと思う。
すぐに氷河君を女の子たちが取り囲んだ。
曰く、キャー、氷河君、会えるなんて運命ね。
曰く、その浴衣格好いいね、惚れちゃいそう。
曰く、私と二人で回らない?
…お前らグループで来てるんだろうがよ、最後のやつ完璧に友情より恋愛を選んだぞ。
なぁんて、思わず口が悪くなりながらも、ふぅ、とため息を吐いた。
瞬間、睨まれました。
何よ、この女。もしくは、このおばさん。とでも言いたげな視線。
そうですよね、花の女子高生ですものね、…女の子恐怖症になりそう。
ふっと遠い目をした瞬間だった。
此方を伺う幾人もの女子中高生の視線…。
何その情報網、怖い。

「一輝君、一輝君は男子校だったよね?」
「…ああ」

周りの女の子に顔をしかめた一輝君ははぁ、とため息を吐いて、瞬君と氷河君を私から引きはがした。
それから、軽々と私を横抱きにする。
思考が停止したのは言うまでもないと思う。

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