正義・番外編 | ナノ



3
しおりを挟む


ははは、と笑う星矢君に対して露骨にため息を吐いて、瞬君の宿題を見る。
数学が大得意で、いつも星矢君の数学を見ている彼の苦手は社会だ。
各県ごとの特産物とか人口とか、知ってどうなるんですか、とは彼の名言である。
外国と接する機会が多かった彼は、多分、日本内で考えるより、日本という国で考えるのが身に付いているんだろう。
…多分。
結局滅んでしまえば皆一緒なのにね、なんて、聞いてない。
その隣で、氷河君がハーデスはもう自分の肉体に戻ってるはずだよな、なんて確認していたのも知らない。
慌てたように頷いていた星矢君も見ていない。
…見ていないんだってば。
無理矢理に意識をそこから離し、瞬君を見る。

「公民?ってことは憲法とか?」
「公布と施行って何が違うんですか」

嫌そうに、社会のワークを指差す彼。
ん?と覗き込むと日本国憲法の公布と施行の日付を答える問題らしい。
ワークの端の方にぐるぐるとシャープペンで意味のない円が書き込まれている。

「公布は、こういう法律に変えるよーってお知らせすることで、施行は実際にこの法律になりますよってこと」
「つまり?」
「つまり?!そのまんまなんだけどなぁ…」
「えー…あ、7月からずっと、今日夏祭りやるよってことを言っておくのが公布?で、今日が施行?」
「いや、まあ、そんな感じだけど…施行された法律はそれから廃止されるまで、ずっと効力を持つからね?」

わかった!と笑顔で答える瞬君。
これ、絶対わかってただろ。
ニコニコ笑ったまま、彼は告げる。

「ねえ、氷雨さん」
「なぁに?」
「今日の夏祭り、皆で行こうよ、浴衣も準備してもらってるし!」
「…相変わらず、用意周到な訳ね?いいわよ、その代わり、全員がノルマクリアだよ?」

準備してもらってる、ってところが、瞬君のやり手なところだと思う。
末恐ろしいわ、この子。
じゃぁ、瞬君は、此処から此処までね。と、ワークにシャープペンで印を付ける。
他の4人にも印を付けて、一輝君に聞いた。

「お昼は何が食べたいの?」
「工夫された素麺」
「…そんなリクエスト初めてだよ、頑張ってくる」

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 本編に戻る ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -