正義・番外編 | ナノ



2
しおりを挟む


翌日、いつもと変わらない様子で星の子に顔を出した氷雨。
自分を目当てにした男が来るとは知らないのだろう。
小さい子と話すため、腰を落とす様子に、待っていた、とばかりに群がる子供たち。
一歩目が遅れた5人は困ったようにその様子を見た。
子供たちに笑顔で対応していた氷雨は当たり前のように、その存在に気がつく。
嬉しそうに笑いかけ、口だけであとで、と告げた。
こくり、頷いてから出入口の方に視線を向ける。
男はまだ来る様子はない。
お昼を食べ始めた氷雨は、未だに周りを子供たちに囲まれており、優しい姉の顔をしている。
楽しそうに話を聞いている彼女は、時折眠そうに欠伸をしていた。

「眠いのか…?」

子供たちが自分たちで率先して片付けをしている間、近寄った一輝が彼女に聞く。
照れたように笑って少しだけ、と答えた。
それに対し、無理はするなとと告げた一輝をじっと見つめ、クスクスと笑う。

「一輝君もクマあるよ」

その言葉に気まずそうに目を逸らす彼は――他の4人にも言えることだが――今日のことが心配すぎてよく眠れなかったらしい。
よし、と立ち上がった彼女は一輝の手を引く。
そして背凭れのない、むしろキングベッドと言っても良いようなソファーに到着する。

「おいで?」

首を傾げて、自らの太ももを叩く氷雨に固まる一輝。
おず、と近付いて静かに横たわる。
所謂膝枕であり、照れたように視線を逸らす一輝に微笑ましそうに笑う氷雨。

「あー、兄さんずるい!」

瞬が叫んで氷雨の後ろからソファーに上がり、近づいた。
そして、彼女の胸の下に手を回し、肩に顎を置く。

「瞬君?」
「僕も甘やかして?」

首を傾げて、上目がちに近距離で彼女の目を見つめた。
少しだけ頬を染めて、勿論、と答えた氷雨は片手で頭を撫でる。

「氷雨さんっ!」

不満そうに声をあげて、近寄ってくる氷河に彼女は笑う。

「氷河君もおいで、」

ふふ、と笑いながら、身動きがとれないからか手招きする氷雨に眉を寄せながらも近寄る氷河。
一輝とは反対側に上り、彼女の肩に頭を預ける。
ちら、と横目で確認し、彼女の手に自らの手を重ねた。
ぎゅう、と握り締めて、首を捻って囁く。

「せめて、氷雨さんに触れさせてください」

切ない響きを持ったその台詞に、何とも言えない表情をしながらも、いいよ、と返す氷雨。
その場に一歩遅れた紫龍は、下唇を軽く噛み、見つめる。

「紫龍君、お願いあるんだけど…」
「何ですか?」

不思議そうにしながら近付いた紫龍に氷雨は目だけで見上げて、あのね、と口を開いた。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 本編に戻る ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -