◆第1章◆


カルデナル王国。

この国には、一風変わった制度がある。
政府公認の傭兵派遣協会である。

ここの傭兵は評判がよく、商人や旅人、貴族たちにも信頼されていた。4年前、戦争後に国交が正常化し、隣国エレニウス帝国との行き来が盛んになると、ますます需要は増えた。
公認の傭兵と登録されれば、まず生活に困ることはない。
報酬も高く、政府公認故に身分が保証されるからだ。

それがここ数年の傭兵志願者の急増の理由の1つである。

もう1つの理由――それは、ある伝説的人物の存在。

6年前、第32隊――傭兵は5人1組で1つの隊を結成し、脱退するまでメンバーは変わらない――に2人の傭兵がいた。

1人は32隊にこの人ありと謳われた剣の名手。

もう1人は、針の穴さえ撃ち抜くと言われた狙撃手。

2人をはじめとしてこの32隊はたった2年のうちに数々の功績を残し、今でも語り継がれている。


その2人こそ、ジョシュア・ランカスターと、レナ・エアハルトである。

2人はもういないのだが、それ以来、彼らに続こうという野心を持った者が協会へ殺到しているのだ。


とはいえ、傭兵は傭兵。任務中に命を落とす者もいる。現実に活躍できる人間は本当に実力を持った人間だけである。

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