清涼飲料


雲一つ無い快晴

歩道は木陰になっていて、その下から空を仰ぐと
キラキラと、微かに漏れる日光が光る

無風と言うわけでもなく、強すぎず、かといって弱すぎもしない心地良い風が肌を撫でた


が、



「お疲れ様です」

「おーう…」

「お疲れ様です」

「ぁ、あぁ……」



校門裏口に集まる男子バスケ部マネージャーらは次々と“帰ってくる”部員らに
ドリンクを手際良く渡していく



「清水さん、桜井君まだ?そろそろ先頭組終わるよね…?」

「はい。そろそろ来ると思うんですが…あ、来た。良ー」



外周コースを走ってきたのは桜井1人

他の部員は見当たらず、徐々に徐々にと彼はペースを落として校門まで辿り着いた


そこで蛍がドリンクをはいと渡せば、桜井は反射的にスイマセンッと返事する



「何で謝ってんの」

「あ、スイマセン…つい……」

「また…って、いっか。外周お疲れ、もやしの割にはホント持久力あるよね」

「も、もやしじゃありません…!」



桜井がそのまま体育館に流れていこうとすると、蛍も周りのマネージャーから行けと指示され
仕事をしなくていいのか…と思いながらも桜井の後に続く

体育館出入り口でゆっくり腰を下ろす桜井を、蛍は突っ立ったまま眺めた



「蛍さんは座らないんですか?」

「いや、私は別に…ほら、疲れてないし…このあとはまだ練習でしょ?」

「個人練です…ね、僕はシュート練です」

「そか…、あ。はいタオル」

「あ、ありがとうございます!スイマセン!」

「アハハハ、ほんと口癖ってスゴ」



ほいと放り投げたタオルを受け取って、桜井は滴る汗を拭う



「あの、蛍さんも飲みますか?」

「え?」

「ずっと立って待っていたんですから…あ、でもヤです…よね」

「…いや、私は気にしないけど桜井は…」



と言いながら、差し出されたドリンクホルダーを受け取って
それと桜井とを交互に見たが

これといって照れている様子もない



「僕は平気です」

「ほう、そんなに私が男に見えると…」

「ちちち、違います!その…恋人が相手だとあまり気にならないというか…あ、いや気になりますけど、その…!」

「…その?」

「…蛍さんが疲れて倒れたりしたら大変ですし…特にこの時期は…」

「アハハ、ありがと!」



ホルダーに口をつけ、グイとあおると
冷たいスポーツドリンクが喉を伝った



青い、清飲料



「あ、」

「どうかしましたか…?」

「ごめん、全部飲んじゃったよ、良」

「えぇ!?」

「どうする?戻す?」

「も、戻さなくて良いです!だ、大丈夫ですから…!」

「つか良、お手製のハチミツレモンウォーターがあったじゃないか」

「あ、あれは……」

「あれは?」

「青峰君に持って行かれてしまって…」

「あれ変だな、何だか無性に部室の掃除をしたくなってきたよ。何かけしからん雑誌とか大量に焼却炉にぶち込みたい気分」

2012/08/10

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