息抜き


冷房の完備された図書館は真夏の暑さを完全にシャットアウトして
自主勉強に励む学生らに快適な空間を与えていた

桐皇学園の校舎と、推薦関係で入学した地方出身者用の寮との間に図書館はある



「翔一ー…休憩しませんかー…?」

「?…あぁ、せやな」



グテッと机にうつ伏せていた蛍がそう声をかけると
今吉は時計を確認してからシャーペンを置いた


3年生である2人は受験生であるため、部活が休みの日はこうして受験勉強に励んでいる

自動販売機で購入してきた冷たい缶コーヒーを2つ手に
今吉はもといた机に戻ってくるのだが



「…どないした?もうへばっとるんか…」

「古典わからーん……」

「古典?蛍、理系とちゃうんか?」

「受験科目が国数英の3科なんですー、諏佐助けてぇー…」

「ワシには助け求めんのかい」

「うっさいわ。“サトリ”に教えてもらったら受講料取られそうでヤだわ」

「別にそないなことあらへんで…?」

「諏佐遅いー…」

「シカト!?」



いつもなら諏佐を交えた3人で黙々と参考書に取り掛かるのだが
諏佐は今職員室で担任教師と面談中だ



「そういえば、翔一は1回くらい家帰ったりしないの?」

「あぁ、来週に3日だけ行ってくる予定や」

「いってらっしゃーい」

「蛍は?親御さん、山口やろ?」

「んだ、遠いからオラ行かね」

「誰やソレ」

「いやぁ、本当に遠いしさ、冬には帰るから良いかなって」

「…………」



飲食可能なスペースまで行ってからプシュッとプルタブを押して
カフェラテをグビグビとあおる蛍
そんな彼女を眺めながら今吉もコーヒーに口をつけるが
その視線に蛍は首を傾げた



「何?」

「別に?彼女の可愛い顔拝んで「あー古典とかもーどーやんのー…」

「人の話聞いてぇや!今ワシええこと言ったで!?」

「え?なんて?」

「……………」



ハァ…とため息を吐いて今吉は肩を落とし
蛍はいじりすぎたなと苦笑しながら、トントンと励ますように彼の肩を叩いた



「ごめんごめん、ちゃんと聞いてるよ、翔一君」

「…あんなぁ…」

「まぁまぁ、ほら。休憩したし、勉強再開ー!」



蛍は今吉の分の空き缶も手にゴミ箱へ向かおうとするが
彼女へ缶を手渡した時、今吉はあることを思いつく



「せや」

「ん?何、ちょっと怒らせた見返り寄越せって?」

「わかっとるんなら話は早いわ」

「いつもじゃん、はいはい何でござんしょーかね…」

「キスさしてくれたら許すわ」

「な、……なん、だとっ……」

「んな驚かんでもええやろ!?」



きも、ほどほどに



「さあ、こい。今、こい」

「何構えてんねん、これからバトロワでも始めるんか」

「いいね!空手部主将負けないよ!」

「ウソやろ!?ワシ完璧負けるやん!」

「おらおら兄ちゃん、表出て一勝負しようず」

「…お前ら図書館で何してんだよ」

『あ、諏佐』

2012/08/10

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