納涼祭


「………………」

「どうした?花宮」

「話し掛けんな」

「相変わらず愛想悪いわねぇ…」

「つーか蛍と小太郎はどうしたんだ…?」

「あぁ、あの2人ならさっき……」



木の沢山植えられた境内の脇

赤い鳥居の立つすぐ下に男4人(内1人は不明)が往生しているのだが
子供が見上げるくらいのその鳥居はなぜか今日ばかりは小さく見えてしまう


しかし、それも無理はないだろう

190cmにもなる大男が3人も肩を並べているのだから

そんな面子の中に囲まれるもう1人も平均男性身長よりも高いはずが
小さく見えてしまうのも仕方がない



「って、ちょっと…いつまで食べてんのよ」

「あ?腹減ってんだから仕方ねーだろ」

「ハハ、根武谷も相変わらずだな」

「鉄ちゃんだって…足の具合は大丈夫かしら?」

「あぁ、問題ない」



待ち惚けを食らっているその4人
木吉、花宮、根武谷、そして実渕はある人物から召集メールを受け取って
都内のこの神社で開かれている夏祭りに来ていた

そして召集をかけた張本人、蛍はというと
同じく召集をかけられた葉山と共に少しその場から離れている


ズルズルと大量に購入した焼きそばを平らげていく根武谷を見て
木吉は笑い、実渕は呆れるのだが

1人。花宮だけは口を閉ざして眉間に深いシワを刻んでいた



「何イライラしてんだよ、花宮」

「うるせーな…。何で京都に行ったはずのお前らがいるのか理解出来ねーし、何でこんな催し物に来なきゃいけねーんだか…」

「とか言いながらちゃんと来てるじゃない、素直じゃないんだから…」

「オカマは黙ってろ」

「でも確かに…何でわざわざコッチ(東京)まで来たんだ?」

「寮がちょうど工事になっちゃってね?寮生は全員一旦帰宅になったのよ。征ちゃんも一緒に帰ってきてるわ」

「都合の良い寮だな…ったく」

「お待たせしましたー…!」



と、ちょうど根武谷が焼きそばを完食し花宮がうわっと声を上げたところで
バタバタと蛍と葉山が戻ってきた

その手には様々な物があり、どれも屋台で買ってきた物だろう



「どうしたのよ?コレ」

「清水と一周してきて、全部買ってきた!」

「そんなの見りゃわかるわよ」

「いやぁ…みんなを呼べたのは良かったんだけど…大人数で移動するのもアレだし…鉄平君とか真君とか…ね」



はい、と蛍はかき氷を実渕に手渡しながらチラチラと木吉、花宮に目配せする

恐らく木吉の膝と、花宮の機嫌を考えてのことだったのだろう



「でも!やっぱりみんなでお祭り楽しみたかったし…ね!コタちゃん!」

「うん!」

「…1年会ってなくても、アンタ達の仲は相変わらずなのね…感心するわ」

「仲が良いのは良いことです!!ね、真君」

「知るか」



色々な食べ物を手にして来たが、かき氷だけは1人1つという配分になるようになっていて
1つずつを手渡ししていき…

花宮にも何とか押し付ける事が出来た



「それじゃあ、皆さんの再会を祝いまして…」

「別に元チームメートでもねぇのに何が再会だか…」

「まぁ…良いだろ?偶にはこういうのも」

「あれ!?根武谷もう先食べてたの!?」

「お前らが遅かったからな」

「…………えっと、お久しぶりです。頂きましょう…」

「はい、頂きましょう」



蛍の音頭に返答したのは実渕だけだったが
まずは揃って、かき氷を平らげた



祭にて、会いましょう



「じゃあ、俺は帰る」

「えぇ!?ま、真君…!」

「やっぱ花宮だけは乗らないんだな…」

「元々だろ?アイツのああいうのって、好きにさしとけ」

「えー、せっかく集まったのにそれはつまんないよ」

「大丈夫よ。蛍ちゃんが追ったんだから…」

『…“から”?』

「あの子に腕力で勝てたこと無いでしょう…?…みんな」

『……………』

20120/08/26

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