アイスコーヒー


「あっついな、コッチは…」

「秋田はやっぱりそうでもない?」

「まぁ、その分休みは短いけどね」



都内、交差点をちょうど渡りきった蛍と氷室はそのままカフェへと流れ入った

ドアを開けばカランカランとベルチャイムが鳴る



「あれ?蛍って珈琲飲めたか?」

「失礼な…私だって珈琲飲みますけど……?」

「そうか、ゴメンゴメン」



秋田の学校に通う氷室と、東京の学校に通う蛍とは幼なじみに近い関係だ

氷室が渡米するまでは近所に住み、よく2人で遊んだ


そんな訳もあり、夏休み中の今は蛍に街の案内を頼んでいる



「でも結局、ストバス見つけて仲間に入っちゃうし…」

「仕方ないだろ?人数足らなかったんだし」

「…そういうことにしといてやるよ、キザ男め」

「Thank you…」



流暢な返事を苦笑しながら言えば、はい。と蛍がカップを突きだしてくる



「おごり」

「い、良いのか…?悪いな…」

「貸し1コね」

「え………」



アハハと笑いながら、それじゃあ次に…と蛍はドアを開いたが
そこでピタリと足を止めてしまい

後ろについていた氷室はどうした?と彼女の後ろから前を覗くように体を傾けた


蛍は、カフェのテラス席へと視線を注いだままだ



「は、はなみっ……」

「“ハナミ”…?」

「花宮っ…」

「……何だよ」



そこにはさされたパラソルの影に設けられた席に腰掛け
本を片手に珈琲を飲んでいた、花宮がいた



「知り合いなのか?蛍」

「“蛍”?…お前彼氏いたのか」

「彼氏じゃないし…、えっと…花宮とは知り合いというか何というか…ク、」

「?」

「クラスメート…ですます」



カタカタと震えるのには、何かトラウマにでも値する恐怖を抱いているのか

蛍は文字通り、真夏の炎天下
真っ青になっていた



「“クラスメート”なんてキモいこと言うんじゃねぇよ」

「べ、別に事実を述べているだけであって…間違った事は……」

『嫌なクラスメートだな、せっかく教えてくれたのに…』

「……は?」



花宮と蛍の間を割って口を開いた氷室だったが
それは日本語ではなく、英語だった

しかし英語には滅法な蛍は首を傾げ、何を言っているんだ?と眉間にシワを寄せている



「な…何?今なんて言ったの、辰也…」

「あぁ、ゴメン。蛍の悪口じゃないよ」

「そ…そう………」

『嫌な奴で悪かったなぁ、彼氏クン』

「は!?…花宮っ?」

『別に俺は蛍の彼氏じゃないよ。そういうこと言うと蛍が怒るからね』

『ふはっ、そーかよ。どうでも良いけどな』

『邪魔して悪かったね』

「……あ、あの」

「じゃあ蛍、行こうか」

「いや、あのさ…私を置いて勝手に進めないでくれるかな…」


英語で……



アイコーヒー、1つ



「っていうかさ、辰也…なんか花宮と“ボーイフレンド”がどうのとか言ってなかった…?」

「あぁ、別に気にすることはない。雑談だったから」

「…そう……」

「でも、あの花宮君って英語ペラペラだったね…頭良いのかい?彼」

「まぁ…頭良いを通り越して化け物レベルですわ」

「へぇー……」

(花宮がバスケやるってことは、黙っとこう……)

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