「新八君!僕と結婚して欲しい」


どうして今まで気が付かなかったのだろうか。こんなに簡単な事だったのに。
その時僕の世界が明るく解き放たれたように感じた。


「ああ、結婚ですか。はい、ちょっと待って下さいね……って結婚ンンンンン!!?」

九兵衛は急く気持ちを抑えきれず、新八の職場である万事屋へと赴いては第一声に冒頭の台詞を吐いた。新八はと云うと玄関先で言われたその言葉に、何時もの笑顔で対応し先ずは御茶をと九兵衛を招き入れた。そして暫くの沈黙の後、勢いよく振り返る。あり得ない単語が聞えた気がした。余りに有り得ない言葉に脳が受け入れを拒否した程である。それを聞いていた銀時と神楽も目を点にして事の成り行きを眺めている。


「そうだ、結婚だ。嫌なのか?」
「え、嫌とかその前にえっ」
「してくれるのか、くれないのかはっきりしたまえ」
「いやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待って!待って九兵衛さん落ち付いてェェェ!!」

突然の来訪に、脈絡も無い要求。結婚とそればかり迫る九兵衛に、新八は困り果てている。しかし顔は何処か赤らめて居て、まんざらでもなさそうだ。そんな様子に銀時と神楽は興味を無くし、各々好きな事を始め二人だけ日常へと戻って居た。

「良いじゃん、結婚して貰えヨ」
「そうそう、一生童貞な魔法使いフラグビンビンなお前がだよ?結婚迫られるなんてもう二度とねェって。今のうちに結婚決めとけよ。これ逃したらお前もう一生無理だからね。眼鏡ケースと結婚する位しかないから、この先」

「お前等云い過ぎだろォォォオ!!」

好き勝手云いだす二人にいい加減腹が立って来た新八がすかさず突っ込む。今日も突っ込みは快調な様だ。しかし、目の前の問題は何一つ解決してはいない。おそるおそる後ろを振り返れば、変わらず新八を見据えている九兵衛が「結婚」と云ってくる。


「あの、九兵衛さん。取り敢えず落ち着いて話し合いませんか…?」
「僕は至って冷静だが。ふむ、取り敢えず日取りから決めようか」
「話が通じねェェェェエ!」


新八が両手で頭を抱え盛大に叫ぶ。先ほどまでは赤らめていた顔の色も今ではその色みの面影もない。叫び疲れが見える程である。溜息を吐き九兵衛を見る。強く迫る意気込みに押されるも、流されてはいけないと座るよう促すべく九兵衛の肩に手を置いた。――…瞬間、新八は宙に浮いていた。投げ飛ばされたのだ。すっかり忘れていたが、九兵衛は生粋の男嫌いである。その九兵衛が、何故いきなり男である自分に結婚を迫って来たのか。新八はその疑問を十分考える暇もなく、床へと叩きつけられて意識を手放した。



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -