「っ八戒…!!」
「……ッハァ、っぐ――」


気が付くと目の前には紅。
それが自分の頬へと掛かるが不思議と不快ではない。むしろ、温かくそれはまるで――



「…あれ?どうしたんです?そんな顔して」
「バーカ、そりゃァこっちの台詞だ」
「お、俺!水!水持ってくる!」

バタバタと走る悟空の脚音をにだんだんと現実へと引き戻される。
自分は倒れてしまったようだ。それを悟浄と悟空が覗き込んでいたのだ。血と違う紅の正体が分かると、くすりと笑みが毀れる。その様子を呆れたように、悟浄は髪を掻きあげて溜息を吐くが、安堵しているのは見て取れた。その様子に申し訳なさとは別の感情が込み上げる。


不謹慎だが、うれしい。


「八戒、水!」


水を並々と次いで来た悟空は、水を飲めば治るとでも思っているのか、たくさん飲むように進めてくる。一口だけ口に含み喉を潤す。笑顔を向けてやれば漸く安心したのか、悟空も大人しくなって、水で胃を膨らませることは避けられたようだ。

未だに心配してくる二人を宥めて、部屋を出る。
少し、外の風に当たりたかった。



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