再びカードに目を落とすと、カードは逆位置になっていた。
吊るされていた男が、片足を上げて陽気に踊っているように見える。


「『試練を与えて、お前は欲望に負ける』という宣戦布告でしょうか」
「意味わかんねぇえ!さっさと掛かってくりゃ良いのにな」

悟空がうなり声をあげて、髪を掻き乱す。どうやら許容量を超えてしまったらしい。それを馬鹿にして喧嘩が始まりそうな二人を咳払いして諌めた。するといとも簡単に黙ってしまって逆に申し訳なくなってしまう。

「宣戦布告なら分かりやすくねーと意味ねーんじゃねェの?」

ふと、洩らした悟浄の言葉に先ほどの易者の声が頭の中に半数する。

「それがあなたです」


何かの文献か何かで見た覚えがある気がした。何かが引っ掛かり、記憶を掘り起こすと。一つだけ、思い当たる話が出てきた。

北欧神話の最高神・オーディン。

それがモチーフになっていると聞いたことがある。

一つ記憶を紐解くと、芋づる式に思い出す。

オーディンはルーン文字の解読方法を知る為に世界樹・ユグドラシルの枝から9日間にわたり首を吊り続けたという逸話がある。そこから吊るされた男になったのならば、『お前はオーディンの様だ』という意味なのだろうか。


オーディンは片目がない。知識を得るために気に吊るされたと同様に、魔術を得るために己の片目を差し出したのだ。

妖力を得て、片目がない。その点も自分と重なると言えば重なる。多少こじ付けがましいが、一度考え出すと止まらなくなる。オーディンだと言うならどういう意味なのだろうか。知識欲に溺れ自滅するとでも言いたいのか。はたまた、過去の自分をあざ笑うものなのだろうか。片割れと繋がる禁忌を、目的手段の為なら女を凌辱する非道な彼と同等だというのか、それともすべては自己愛だと言いたいのか。吐き気がする。胃液が込上げて口の中が苦い。雨の臭いが不快で、あの日の情景が浮かぶ。血と雨に濡れた、あの―――


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