宿へと帰れば、同じく雨の得意でない三蔵は部屋に引き籠っており、悟浄と悟空がリビングでくつろいでいた。すっかり濡れてしまった己の姿を見て、悟空は心配そうに眉を下げ、何か言いたげにこちらにどんぐりの様な金色の瞳を向ける。それを安心させる様に一撫でして、一枚のタロットカードを差し出した。
「吊るされた男らしいんです、僕」
「はぁ?」
一枚のカードを見つめる。
タロットカードはその位置で意味を変える。吊るされた男は正位置の意味では
『 修行、忍耐、奉仕、努力、試練、着実、抑制、妥協』
逆位置では
『徒労、痩せ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に負ける』
手に落ちた時は確か逆さ吊りに見えたので、正位置であろう。
これから試練を与えるとの宣戦布告であろうか。
悟浄が覗き込んできて、そのカードを手に取る。裏表にしたり、透かしたりと眺めてから八戒の手へと戻す。
「どうしたの、これ」
「変な易者に渡されたんですよ」
「えー、それ妖怪じゃねーの?だったら倒さないとヤバくねェ?」
「やめとけ、やめとけ。変態だろ、どーせ。関わんない方が身のためだって」
易者とのやり通りを一通り説明してやれば、共通して思い出すのは昔倒した敵である清一色であるようで、二人は何とも言えない微妙な表情になる。
「何度も殺してるのに、彼では無いと思うんですがねぇ。ただ……」
ただ、何の意味があるのだろうか。
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