「気持ち悪い」

プールから出れば、服が肌に張り付いて深いな上に水分を含んだ布は重く動きにくい。
勢いで入っていた時は結構楽しくて、なんだか出たくないだなんて思っていた。しかしその結果がこれである。
沖田がシャツを脱いで絞ると、じゃばじゃばと音を立てて水分が下に落ちた。勢いよく水分を払うとパンッと軽快な音がして、洗濯の後の爽快感を感じる。
背後から水の音がして振り返ると、神楽がプールから上がろうとしているところだった。


それを軽く突き飛ばす。


「んなっ…何してるアルかゴルァァァァ!」

またデジャヴュだ。
先程と全く同じように水音が立ち、神楽が飲み込まれる。

水面から顔を上げると同時に放たれた避難の声にも、沖田は同じない。それが更に神楽を苛立たせたのか、一発殴りかかんと言う形相で手摺りを掴みはい上がろうとする。沖田はそれを上から頭を押し、邪魔をした。



「お前…ふざけるのもいい加減に……!」
「ばーか」
「な―…」






「透けるだろ」





そう言って、沖田は手にした己のシャツを見せた。白いシャツは水に濡れ、透けている。


騒いでいた神楽が黙ると、プールサイドは静寂に包まれる。それが何故かむず痒く、普通のことを話している筈なのに落ち着かない。この違和感何故か気持ち悪く、そのまま黙っていたくなくて、沖田はぽつりぽつりと言葉を紡いだ。



「これも濡れてっから貸せねーし」
「……」


「ジャージ持ってきてやるから、待ってろ」
「お前が引っ張ったくせに」
「だからだ、ばーか」
「馬鹿はお前アルゥゥゥ!」



馬鹿、という言葉が引き金になり再び悪口が飛び交う。

先程まで感じていた違和感はもうない。




この気持ち悪さを誰か上手く言葉にしてはくれないだろうか。
そうしたら幾分すっきりするだろうか。



今だ続くたわいのない軽口を背中に受けながら、教室へと駆け出した。







(No name)
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