男女
「冷てェ」
「あ、な…やぁっ」
絹のような肌に触れる。自分の手によって開けた着物。好みで全ては脱がせていない。そちらの方がそそるからだ。
自分の発言が女の気を逸らしたと気付くと、小さな乳肪を包んでいた己の手を中心へとずらす。手探りで中心を探り当て、きゅっと摘む。女の口から色めいた声が漏れた。
「いや、冷てェなって」
耳元で低く囁き、耳を食む。
女心と秋の空とは良く行ったものだ。女は直ぐに気が変わる。それを知っている位には女の扱いに慣れていた。
「ふ…ぁ、も…誰の所為です、か」
「あァ、俺の所為だな」
顔を赤らめて睨む女を見て、喉を鳴らして笑う。肌を曝し、触れられても尚、強気な態度を崩さぬ女が酷く可笑しかった。その理性を崩したところが見たくなる。
後ろから抱きしめたまま手探りで中心の飾りを摘む。女の白い首筋に舌を這わす。下から上へ。うなじへ辿り着くと柔く噛み付いた。
「…ん、つっ…」
互いに顔が見えないのが良い。
何も気にせず行為に集中出来るから。
今夜はただの、男女なのだから。
胸から脇腹へと手を滑らせ腹を撫でる。臍から下へそろそろとなぞって、そこで再び上に戻る。
「や、ぁん…」
物足りなそうな切なげな声。膝を擦り合わせてるのは無意識なのだろう。
素知らぬ振りをして、太股に触れると女の身体が跳ねる。既に余計な会話は消えていた。
「なっ…んで、」
「――何がだ」
「……やな男」
ぐいり、と身体を反転させて組み敷いた。
「なァ、お妙さんよ。アンタが近藤さんに落ちねェのは、てっきり銀髪と出来てんのかと思ってたんだが」
「――無粋ね。乾くじゃないの」
先程まで涙目で潤んでいだ瞳が、急に興が削がれたように細められた。喘ぎしか知らなかった口から、色も何もない溜息が漏れる。
するりと腕下から抜け出た彼女に、背を向けて煙草を探す。火を点けて煙を肺に送り、吐き出してから見ると着物は何事も無かったように直されといた。
「じゃ、私帰りますので」
「あァ」
「それ、気の毒ですけどご自分で何とかして下さいね」
済ました笑顔のまま、そう行って下半身を指差した。面食らう。言葉に詰まっていると、さっさと女は出ていった。
「ククッ――…ありゃァ手に負えねェよ、近藤さん」
短くなった煙草を灰皿に押し付ける。
右手を下半身に滑らせた。