それは確かに恋だった.終幕
何の為に生きてるのかと尋ねられたら、馬鹿真面目に綺麗事やら野心やらをつらつら喋るほどの中二病でも無く、死にたくないからとかそれ位しか思い浮かばない。
古来人間だって種を残す為に生きていた、と聞かされた所で進化してしまった自分達は性交なんかしなくても生きていける。それでもしたくなったりするのは、やはり本能なのだろうかと考えつつ、避妊対策にゴムを付けてまで遣るのは本能とは違うんじゃないだろうかなんて自分の現状を第三者のように考えてみたりする。
そう、現在進行形でセックスをしています。今風に言うと、セックスなう。いや、これもう古いんじゃね?
等と、下らない事を考えながら規則的に腰を振る。そんな事をしていれば、何考えてるのだなんて女からの文句が入りそうなものだが、相手の女も心此処に有らずと言った感じでセックスに集中していない事は分かっていた。
自分の事を棚にあげといて、彼女のそんな態度が苛ついた。
そこで漸く、再会して初めて彼女に苛ついたと気付くが、それは昔とは全く質の違うものだった。
どうにもやり切れない。昔の恋に気付いた所で、それは始まる前に終わっていた。彼女も自分も歳を取って、変わっていたのだ。何もかもが変わっていて、起動修正等出来なく、好きだったチャイナを探すように成長した彼女を抱いた。
(あー…何でヤッてんの、俺達)
酒が入ってなし崩しに、二人切りのまま休憩なんざ銘打って、ノリでヤッちゃって、それでもゴムを付ける事だけは抜かりなくて。
朝になったら何事も無かったように、此処を出てくんだろうなと思うと、悲しくて堪らなかった。
それでもやはり、気持ち良かったりする自分も、ヨガるこいつも、全部が気持ち悪いと心底へどが出た。
(それは確かに恋だった.終幕)