スナイパーとターゲット

※殺し屋烈火パロ


とある超高層ビルの屋上から、やはりこれまた高層ビルの、山で言う八合目位の階の一室へ向けて組み立てた銃のスコープを覗き込む。

ターゲットは、森紅麗。
言わずと知れたCO-COM財団会長の一人息子。
特徴は、左顔面の火傷。

(あいつかぁ…。綺麗な顔なのにカワイソウになー。)

照準を合わせた先には、情報通り、火傷の男。ちなみにめちゃくちゃ美形。

(まぁ、堅気じゃないからには、色々あるよな。お互いに。)

暖かい陽射しに、くぁ…と欠伸を洩らしながら、内心で独りごちる。
CO-COM財団と言えば、世間的には誰もが知る慈善団体だが、実態はヤバい筋にもお付き合いのある黒い団体だ。そりゃもう真っ黒。噂によると、俺の同業者もかなりの数抱えてるらしい。やることやってりゃ、命狙われても、しょうがないってもんだ。

(因果応報、ってな。)

自分のことは棚に上げて、そんなことを考える。

さて、そんなことよりそろそろ時間だ。
奴が、自分の執務室に一人きりで籠る時間。
しかし、部下らしき男が中々部屋から出て行かない。無駄話なんかしてんじゃねぇよ。仏頂面してやがる癖に。俺は早く帰りてぇんだっつーの。

(しっかし……マジで綺麗な顔してんなぁ…。)

暇潰しがてら、スコープ越しに森紅麗を観察する。

本当に美形だ。
いや、綺麗。ぶっちゃけ、女みたい。
けど、切れ長の目――しかも結構眼光鋭い――が女性らしさを微塵も感じさせない。あいつは関わったら駄目な人間だな。所謂、アブナイ男って奴。
だけど、部下(多分)に時々見せる柔らかい表情は、見てるだけで同性の俺でもドキドキする。

(……って、何、男相手にときめいてんだ、俺。)

しかも、殺しの標的の男に。
まぁ、でも、もうすぐ死ぬんだし、だったら見れる内にしっかり拝んどかないと損だよな。と何となく自分で自分に言い訳して、スコープでガン見を続ける。
ヤバイな、俺、男でもいける人間だったのか?いやいや、そんな…。

(お、ようやく出て行ったか。)

内心で葛藤していると、部下(もう決定)の男が部屋を後にした。あとは、奴が良い位置まで窓に近付くのを待つだけ。要するに、執務机の椅子に座ればオッケー。
これで、俺もようやく仕事を済ませて帰れる。

(でも、残念だな……もうちょい見てたかったのに…。)

いや、嘘。
今の嘘。ナシナシ。

頭を過った危ない考えに、ふるふると頭を振って追い払う。
ふぅ、と軽く深呼吸をし、気持ちを切り換えて再びスコープを覗く。と、

(―――っ!?)

目が、合った。

森紅麗と。

驚いて、咄嗟に身体を後ろに引いた。
いや、そんなはずは無い。
だって、向かいのビルとは数十メートル離れてるんだから。
たまたま窓の外を見た奴の視線が、スコープの真っ正面だっただけだ。きっと、そう。

気持ちを落ち着けて、もう一度スコープを覗いたが……

(あれ?いねぇ…。)

ひょっとして、気付いて逃げたんだろうか。
……それは大いにありそうだ。
何と言っても、CO-COM財団の会長の息子。これまでに何回も命狙われてんだろうし、普段から警戒しててもおかしくない。
そして、もしそうなら、俺も今すぐ逃げねぇと。
通報されれば捕まるし、されなきゃ多分、御抱え同業者に殺られるに違いない。

(……んだけど…何か…)

取り敢えず、銃だけは片付けて……何故かそこから動けなかった。
何となく、本当に何となくだけど。

あいつ、が

来るような予感がしたから。
屋上の通用口の方へ身体を向け、じっと、その瞬間を待った。




(撃ち抜かれたのは、俺の方)




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