あくまで事故

「おーい、紅麗、タオル無かったから持ってきた……どわっ!」


洗面所(兼脱衣場)のドアを開けた瞬間、中にいる紅麗が倒れ込んで来た。不意打ちな上に結構な勢いだったせいで支えきれず、そのまま二人仲良く廊下に倒れてしまった。


「びっ…くりした〜。大丈夫か、紅麗。」

「あぁ。お前は?」

「俺も大丈夫。ってか紅麗でも転けることってあるんだな。」

「時々思うが、お前は私を人だと認識していないだろう。」

「まぁ、ちょっと浮世離れしてるイメージはあるな。」

「全く、失礼な奴だ。」


床に倒れたまま会話をする。
もう付き合ってそこそこなるし、やることだってやってるから、上半身裸の紅麗とこんなに密着したところで、今更照れることはない。だからだろうけど、


「まだ髪濡れてんな。」

「風呂上がりだからな。」

「うっわ、チクチクする!」

「お前も同じ髪質だろうが。」


何故かずっと床に寝転んだまま。
無意識に、すげぇナチュラルにイチャついてたんだと思う。


「今何か凄い音したけど、何かあっ……」


リビングから心配して見に来たらしい薫が、床に転がる俺らを見るなり固まった。
ドン引きしてるらしいことが空気で分かる。


「………紅麗サイテー。」

「待て、誤解だ!!」

(まぁ、そう見えるわな…。)


紅麗はしばらくの間、薫に冷遇された。



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