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「うわ!何じゃこりゃ?!」
階段の上から烈火の頓狂な声が聞こえ、急いで――しかし半ば呆れながら、二階へと向かう。
「どうした?」
「あ、紅麗。俺、またやっちまったみてぇ。」
自らの机の前で突っ立っている烈火の傍に寄り、引き出しから溢れんばかりの消しゴムを見て、私も事態を理解した。
「だから何か買ったらメモをしろと言っているだろう。何の為に手帳を持っていると思ってるんだ。」
「だって俺、買う時は基本衝動買いだし。」
もう何度目か分からない説教を垂れる。しかし、烈火に堪えた様子は無い。
それに毎度の如く溜め息を吐き、烈火の首にぶら下がる手帳を引ったくった。
「まったく……貸せ、私が書いてやる。」
「やり!サンキュー紅麗!」
「調子の良い奴だな…。ほら、せめて消しゴムの数ぐらい数えろ。」
途端に全開の笑顔を見せる烈火に、手帳のページを捲りながら、軽く小突いて意趣返しをする。(当然まったく堪えていないが)
「おう!えーと、いちにーさんし……うわ、23個もある!」
「しかも随分と中途半端な個数だな。お前、相当適当な買い方をしているだろう?」
「えー、覚えてねぇよ、そんなこと。」
あっけらかんと、そうのたまった烈火に、だから買う時に手帳にその旨を書けと言おうとして、これでは堂々巡りだと気付いて目眩がした。
「……お前といると頭痛が絶えん。」
「ひっでぇ!」
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