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「は、ぁ……烈火さん…」

「あ、あ、雷覇…そこ…!」


雷覇が動く度にベッドがギシギシ危ない音を立てる。(見るからに物持ち良さそうとは言え、このベッドは危険過ぎるぞ。新しいの買え)
室内には、俺と雷覇の如何にもな艶かしい息遣いが響いている。

こんなことをしているが、俺と雷覇は付き合っている訳ではない。当然、恋人同士でも何でもない。
じゃあ何でこんなことをしているのか、と言われると、……実は俺自身にもよく分からない。



* * *




初めは、そう、雷覇が俺を家に呼んだんだ。で、お茶やらお菓子やら、いっぱい出してくれて。
俺と雷覇の共通の話題なんて、風子の話か、……紅麗の話ぐらいで。
途中まで楽しく話してたんだけど、雷覇の声が態度が、あまりに穏やかで普段通りで……優し過ぎて、何か段々堪えきれなくなってきて、ついには雷覇の前で泣いてしまったのだ。

それまでは、ずっと目を背けてた。
紅麗がいないことが、こんなに悲しいなんて、思いたくなかった。認めたくなかったから。
だって、俺とあいつは何度も戦ってて、あいつは柳を泣かせた奴で、俺のことをすげぇ憎んでて、だから俺のことなんか大嫌いなはずで、
―――なのに、
俺は、紅麗がいないだけで、こんなにも寂しい。
紅麗は俺を嫌いなのに、俺はそれでも紅麗にいて欲しい、なんて。

一度認めてしまったら、もう止まらなくて、雷覇がいる前で、呼吸困難になるんじゃねぇのって位しゃくりあげていた。
けど、雷覇はやっぱり優しくて、俺の横に移動してきて、好きなだけ使えとばかりにティッシュを箱ごと俺の前に置くと、あとは俺が泣き止むまで、ずっと背中を撫でててくれた。

泣き止んでから聞いたら、やっぱり風子が雷覇に俺のこと相談してたらしい。
見るからに空元気で痛々しいって。
自分では普通にしてたつもりだったんだけどな。流石に幼なじみには隠し切れて無かったらしい。

それから、ちょくちょく雷覇の家に行くようになった。
やることは大体同じで、菓子食って、茶飲んで、話(主に紅麗の)して、時々俺が泣いて(恥ずかしいとか言うな!)、雷覇が慰めてくれて。
そんなことを繰り返しているうちに、俺も大分落ち着いて来て、前みたいに普通に笑えるようになったし、一人でも紅麗のことを考えられるようになった。
そして、ある日唐突に自覚した。

俺は紅麗のことが好きらしい。
恋愛とか、そういう意味込みで。

理解した瞬間の絶望ったらなかった。
だって、紅麗はもういないのに。
例えいたとしても、戻って来たとしても、紅麗は俺のことなんか好きじゃないのに。好きになんかならないのに。

胸が痛いなんて、そんな生易しいもんじゃない。
心臓が止まるんじゃないかってぐらいの激痛。
涙を一秒だって我慢出来なくて、居ても立ってもいられなくて、全力で走って雷覇の家まで行った。

泣いて喚いて、抱き締めてくれる雷覇にすがって、……気が付いたら、雷覇にキスをされていた。何回も何回も。


「烈火さん、目を閉じていて下さい。―――紅麗様のことだけを考えていれば良いですから。」


そう言って、優しく触れる雷覇を振り払うことなんか出来なくて、俺がすがれるのはやっぱり雷覇しかいなくて。
言われるままに目を閉じ、記憶の中の紅麗の姿を追って、でもすぐに、何も考えられなくなって。

そうやって、俺は初めて雷覇に抱かれた。


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