#04

 
 柳杜奈栖!現在絶賛お引越し中!


「重くない?大丈夫?」
「大丈夫だよwまきちゃんのが心配なんだからね?w」
「いやwwww大丈夫だからwwwさすがにニートだけどこんくらいはwwww」
「www」


 まあもちろんまきちゃん17歳なので人間的な籍は入れてないですけれど。
 そんなんよくあることです。
 りたくんだって17歳だけど婚約済みだし。事実婚ってやつですね。

 まあ、私らは吸血鬼と人間、歳の数え方が違うので人間でいうと17、って表現でしか無いんだけど。


 おうちはなんと一軒家!
 よくわからないけど何故か持っているという謎の物件。(雲月家の)
 ちなみにご挨拶済ましてます。
 もうすでにご両親海外いったらしいです。フリーダム…!


 めんどくさかったしほぼ買い揃えたから荷物は少なめ。
 こないだ2人でニトリとヤマダではしゃぎ回って来た。楽しかった。笑
 2人でグダグダと荷解きしても夕方には終わった。


「ういー」
「奈栖ちゃんコーヒーは飲める?」
「あ!うん、ありがとう!お砂糖なしで牛乳多めでお願いしたい」
「あいよー」
「ありがとうー!」
「いいええ。晩御飯どうしよっかー?」
「だねえ。って…あの、私料理出来ないけど…!」
「あ、うんいいよ、ってか俺がやる気満々だった。」
「家事できるの?!主夫!」
「こう見えて親ほとんどいないし元元マンションで一人暮らしだったんだぜ」
「まじか!たのもしいい!」
「はっはー!だろー!」


 そんなノリで話できるくらいには打ち解けて降ります。夫婦仲良好?


「じゃあ私がガンガン稼ぐよ!」
「!」


 ぱたり、まきちゃんの動きが止まる。
 え、なに?駄目?

 地雷だったかなーと怖くなってまきちゃんを見やると眉を下げて、なんというか、泣きそう?な、顔だった。


「え、え、ごめん、どうした?」
「…!あ、ううん、違うよ!謝ることじゃないよ!」
「…?どうした?…?」
「いや…ちょっと心にささるブラックジョークだなと…」
「ええ?!ごめん!」

 よくわからない地雷だね!

「ううん、こっちこそごめん」
「いやいやいいよ!」
「……、」

 まきちゃんがためらうようにこちらを見ている。

「…?なに?」
「…、その、」

 何かをすごく言い躊躇っている様だ。

「何?大丈夫だよ?」
「…ありがとう…その…
  "対価がない"って、本当?」

 予想外の事にきょとんとしてしまう。
 なんだ、もっと怖いことがくるのかと思ったら。違うのか。

「…っふ、あははは!なんだ!そんなこと!そこ別に躊躇うことないとこじゃね?wwwwww」
「え、そ、そう?」
「まきちゃん心配しいだねえ」
「チキンです…」
「ちょっとこっちまで怖くなったのに!
 そんなこと!無いよ!全然自然に無いよ!でもそんだけだしw」
「…!本当なの…」
「まあねーなんでそんな反応?」
「え、だって辛いだろうなって思ったらもう…もう…!」
「ええこやねwでも別に。仕事なんてそんなもんだよ」
「そ、そうかな…。
 代々ずっとないものなの?美食に対価、って」
「ううん。多分私だけ。」
「そ、そう…」

 よし、よし。
 恥ずかしいならやめりゃいいのにそう小さく言いながら私の頭をなでる。

「すごいなあ、奈栖ちゃんは。」
「…!
  …って、まきちゃん被食の経験なんてないお坊ちゃんのくせに」
「無いからこそ怖いって」
「実際は対したこと無いんだから。」
「そうか…?」


 ……対価、か。
 久々に聞いたなあ、その単語。

 蚊は、誰でも知ってるものだろうか。
 その蚊は、血を吸う。私達と同じ。彼らは刺す痛みを麻痺させるために麻酔をうつ。赤く腫れて、痒くなる。

 私達とて同じこと。
 痛みしか与えないと、餌ーーーまあ、人間。は、嫌がり、血をくれなくなる。
 だから、私達からも"対価"として与えないといけない。

 私達だって生きるのに必死。
 ギブアンドテイク。

 私達吸血鬼は、血を頂く代わりに餌、に"快楽"を与える。
 それが、通称"対価"ですよ。

 私達吸血鬼の唾液は媚薬?のようななんかそんなんを含む。
 っつうか寧ろそれを主成分、位に。
 もちろん吸血鬼相手にも効くし。

 なんか、その快楽ってどうも中毒性あるみたいでさ。そんなんも使ってなんとか私達は食いつないでいる。
 利害の一致だよねえ。


 んで、まあその被食者に与えられるはずのものが私には与えられることがない、ってこと。ただそんだけ。


「やっぱり痛いの?」
「まあ妥当なくらいに。」
「ひーっ」
「普段自分してるくせに。」
「だってちゃんと受け取ってもらってるもん、"対価"。」
「あ、まあ、そうなんだけど」

 そうこう話しているうちに、もう夜が近づいていた。

「ねえ、食品って買いに行かないと無いよね?」
「あ!まじだ!」
「行こうかーお買い物!」

 スーパーに晩御飯の買い出し、なんてお母さんと暮らしていたときぶり位。
 ちょっと子供心がワクワクするね!

「……!」
「まきちゃんw今度は何よ」
「な、だってなんか2人でお買い物とか俄然夫婦感が…!」
「おおう!恥ずかしいなら言わなきゃいいのに!w私まで恥ずかしいわ!」

 かお赤くしながら言うもんだからなんか2人そろって気恥ずかしい感じになってしまう。
 確かに新婚って感じだよね。

「……とりあえず、いこうか?」
「…うん。」
 ってそんな事よりまきちゃん!」
「なに?」
「お菓子は1日いくらまで?」

 だいぶ気まずいっつーか恥ずかしい雰囲気だったので、私はそうやって笑いながら"そうだね、200円でいいよ!"というまきちゃんの手を借りてとん、と勢いよく立ち上がった。


end,

手を差し出したのは彼なのに、照れているのも彼で、でもそんなのを可愛いと思い始めたあたり、もう愛着でも湧いているのかなって、思うんだよねえ。

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