高校入学を果たしたとき、私が真っ先に感じたことは、不安と緊張と、そして解放だった。私の友人の中で、この高校に入学すると確認できた人は誰もいない。というのも、この学校は今年で開校二年目であり、私たちはつまりその2期生にあたるわけでそのあたりがおそらく絡んでいるためか、この学校を志望した人は私の友人の中には誰もいなかった。これからは新しい生活があるのだと私はそう考えていた。新しい一歩を踏み出せるんだとそんな期待が、高校生活初日にはあったのだ。


しかし、期待というものがいかに無意味であるかを私はやはり思い知ることになった。入学式から一週間と数日ののち、私は思いもよらぬ再会を果たしてしまったのである。私も彼も、予想外の邂逅を経て、その驚きたるや、基本無表情を貫いている彼の顔を驚きに染め上げるほどの威力があった。もちろん、私の驚きはそれの比ではなかったけれども。


「……どうして」


お互いが無様にも呆けてるさまは、さぞ滑稽だったことだろう。それでもなお、私はこの予想外の出来事から立ち直れずに、弱弱しい疑問詞が口から漏れ出してしまうのが止められずにいた一方で、どこか納得さえしている自分もいた。ああ、そういえば、彼は。


「……お久しぶりですね、千加さん」


私と思考がとても、とてもよく似ていたことを思い出す。その性格、思考、羨望、そして配役までもが、きっと近い位置に立っているんだということを、私たちはお互いに無意識に理解していた。だからこそ、この結果なんだろうか。結局、私は何も変わらないままになるのだろうか。逃げ出したはずなのに、置き去りにしたはずなのに。愛せども愛せども、空回りすり抜けていくほろ苦い切情を葬りたいだけであったというのに。光を離れた影である彼の、アイスブルーの瞳は小さく揺れて、そして淡く溶けそうな笑みを映した。


「お久しぶりだね、テツくん」


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咲く前に散る