夏目は、同じ大学で同じ学部で同じ学科の友人である。専攻は違うのだが、そういうこともあってかなり近しい友人であることに間違いはないだろう。専攻こそ微妙に違うけれど、興味のある分野が非常に似通っていたので、お互いに選択していた授業のほとんどがかぶっていたために親しくなったのである。そして、親しくなってから気づいたのだが、驚くべきことに彼は同じアパートの住人で、そのうえ隣人だったことを知った時の驚きはお互いに大きなものであったことは言うまでもない。


「もしもし、夏目ー」
『なにー?』
「あのね、ご飯もう食べた?」
『あー、実はまだなんだ』
「煮物作ったんだけど、よかったら食べに来ない?」
『え、行く!煮物ー!』
「おいでー、待ってるねー」

夏目とはおだやかなお付き合いをしている。隣人であるから、半同棲のようなものであることを除けば。それでも、私たちのペースはおだやかである。私は夏目と一緒に食事をするのが好き。自分が食いしん坊ということもあって、私は自炊を結構するほうだ。おいしいものは好き。料理する行為そのものも好き。そして、なによりも好きなのは、夏目がおいしいと笑ってくれることだったりする。だから、ついつい頑張ってしまうこともほんとう。今まで気づかなかったけど、ひとりで食事するよりも、誰かと食事することって本当にしあわせなことなんだなあって思う。

「おれ、煮物すきなんだよね」
「知ってるよー、どれだけ一緒にいると思ってるの」
「えー?もう、2年?」
「早いものだねえ」
「そうかな、遅いと思うけど」
「なにそれ、どういう意味?」
「やっと、2年かってこと」
「だから、どういう意味」
「市花がいるのってあたりまえだったから、ずっとずっといっしょだった気がした」
「え」
「って、そういう意味だ」

夏目は時々、ひどくずるい。夏目と出会って2年、付き合い始めて1年だけど、いまだに夏目には勝てない。こういうことをふつうにいうから、なんだかいつも負けている気がするんだ。出会ってからずっとずっと、こうやってどんどん私は夏目を好きになる。最初はただの友人で隣人でしかなかったのに、今では隣りにいるのがあたりまえな存在になってしまった。そして、これから先もそうであるよう願ってしまう。そんな不思議な魅力が夏目にはある気がした。きみとの過去をやさしくなぞり、きみとの未来に触れたくなるような、やさしい魔法。夏目に出会ってからずっと、私はきみの魔法のなかにい続けている。そして、これから先も、どうかその中にいさせてね。

シュガーポットと星屑と


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