閑話V:寝間着がそれぞれおもろかったっていう話
「わああおー!!なんかこうして改めて見回すと、みんな寝間着がそれぞれ個性的でおもしろいっすねー!!!」
女子ふたりのあとには赤司くん、次にボク、その次に紫原くん、青峰くん、緑間くん、そして最後に黄瀬くんの順番にお風呂をいただくことになりました。黄瀬くんが最後なのは権力関係上の理由からか、あるいは彼が一番お風呂が長そう(現に長かった)という理由から一番最後に回されたんですが、その黄瀬くんがお風呂から上がってみんなで揃って雑談しているのを見て、冒頭のセリフを叫んだ。
『お前にだけは言われたくねーよ』 「上柿っちと桃っちはおそろいなんすね!色違いでかわいい〜!!」
ふわふわパイル地のパーカーと、すそが少しだけフリルっぽくなっているショートパンツで、桃井さんがピンク色のドット、上柿さんがオレンジ色のドットで、確かに黄瀬くんが言う通りとても似合っていてかわいかった。
「でしょでしょー!!さすがきーちゃん!!!」 『さつきが、今日のお泊まり会はわたしとお揃いを着たい!って言うから実はこの前買いに行ったんだよね。わたしは普段こういうの着ないんだけどさ』 「そうなのか?とても似合ってる、かわいいよ」 「はい、とても素敵ですよ」 「なんかふわふわしてる〜、綿あめみたい〜」
なんて黄瀬くん、赤司くん、ボク、紫原くんが素直にほめると、桃井さんが誇らしげな顔で「やったね八重ちゃん!」と上柿さんに抱きついていた。そして、「夏だからといってそうそう素足を晒すものではないのだよ!冷えたらどうする!!」おとん発言をかます緑間くんの横で、何やら無言を続ける青峰くんがいたので不思議に思ったらしく紫原くんが「どうしたの、峰ちん」と声をかけていた。
「あー、いや生足うまそうだなーって思………ってぇ!!痛ぇな何すんださつき!!!」 「うふふ!!私の八重ちゃんを変な目で見ないでくれる大ちゃん?」 「げ!もうやめ……い、いってえええええ!!!!」
うわあ、桃井さんの裏拳が見事に入ったー。青峰くんが瀕死でざまあみろとか思ったのは内緒です。
「ていうか、赤司っちはやっぱり寝間着も和服なんすねー!」 「ああ、そうだ。部屋着も基本的に和服の場合が多い」 「いつも思うけど赤ちんのものってすっごい高そう〜」 「おかげで先週末どう洗濯すればいいのか困ったのだよ」
ああ、そういえば緑間くんたちは先週末もお泊まり会したんでしたっけ。それよりも青峰くんが未だに床でぴくぴくしてるんですけど、これ生きてますかね。
『征十郎似合うよー。さすがイケメン〜』 「……そうか、ありがとう八重」 『照れてやがるー。かわええのう』 「うるさい、照れてなどいない」
どこのツンデレですか。耳が赤くなっているくせによく言います。
「紫原は相変わらずキャラ物のTシャツなんだな」 「んー、まあねー」 「こんなファンシーキャラが似合う男子中学生とかめったにいないっすよー!!」 「えー!でもテツくんならイケると思うけどなあ!!」 『うわ、テツヤも絶対かわいい』
ちょっと、桃井さんも上柿さんもどういう意味ですか勘弁してください。
「つーかいつも思うけどミドチン、ナイトキャップってまじで〜」 「緑間はそれが愛用なんだよな」 「あははは!緑間っちは正統派パジャマにナイトキャップっすかー!!!超似合ってるー!!」 「うるさいのだよ、笑うな黄瀬!!」 『テツヤもあれかぶれば寝癖つかなくてすむじゃねーの?』 「いやです、あんなの」 「黙れ黒子!!あんなのとはどういう意味だあんなのとは!!!」
そのままの意味です。大体なんでよりにもよって緑色なんですか、髪と同化してるじゃないですか。それにボクはそういうのをかぶってると多分寝づらいと思うので心からご遠慮したいと思います。
「というか、俺よりお前のほうが常軌を逸しているのだよ黄瀬!!」 「えー?なんでっすかー!!!かわいいでしょー!?」 「ふふー!!確かにかわいいのはかわいいけどさー!!!」 『なぜ180越えの中学生男子がピ○チュウの着ぐるみパジャマなのか』 「ものすごく不愉快なのは俺だけか?」 「俺もだわ〜、すっごくひねりつぶしたいー」 「ほら鳴いてみてくださいよ、キセ○ュウ」
黒子っちひどいー!!でも結構似合ってるでしょ?となにやらシャララ☆と効果音が聞こえてきそうなうすら寒いスマイルを浮かべる黄瀬くんにボクは頭が痛くなった。そして、上柿っちー!俺かわいいー?と上柿さんにすり寄って『着ぐるみだもんだから、なんか黄色いネズミに黄色いわんこが食べられてるようにしか見えないわー』と返り討ちにあっていて、全員でざまあと笑ったのに黄瀬くんは嘆いてて気付いていなかった。
「ていうか、俺よりおかしいのはそこでしんでる青峰っちでしょー!!!」 『大輝ー?生きてるかー?』
上柿さんがしんでいる青峰くんをつつくと、青峰くんが上柿さんの手を掴んで起き上がった。
「あー?なんだようるせー」
そんな彼のTシャツには「童貞魂」と達筆な文字でプリントされていた。
『ぎゃははは!!大輝なんだよそのTシャツはー!!!』 「いやいや童貞魂ってウケ狙いにもほどがあるっすよ!!」 「あー?おもしれーだろこれ!!!」 「そういう問題ではないのだよ!!!」 「お前それいろんな意味で恥ずかしくないのか」 「童貞乙〜」 「これはひどい」
ウケ狙いにもほどがあるでしょう。というか本当は早く披露したくて、でもとっておきたくてお風呂上がってから何故かずっと枕抱えて隠してたんですね。誰もつっこまなかったですけど。
「つーか、俺よりテツだろ、まじで黒子かよ」 「はい、ボクは黒子です」 「そうじゃねーよ!!」
ふふ、なにがいいたいんでしょうかね。ボクがひとりで笑っていると、上柿さんがツッコミをいれてくれた。
『今夏なのに長袖で全身真っ黒とかリアル黒子さんじゃないですか』 「え?!あれ、テツくんどこー?!」 「ちょ、ミスディレってて俺にはみえないっすー!!!」 「お前の隣りにいるぞ隣りに」 「ちなみに実はこんなもんもあります」 『あははは!!なんでそんなもんあるの!本当に黒子じゃんそれだと!!』
正式名称は分からないですが、「黒子」のひとが顔を隠すために頭に被っているあれです。これで全身リアル「黒子」になりましたよね。
「えー?ちょっと俺も黒ちんわかんない」 「黒子、本当にわからないのだよ!うろちょろするな!!」 「ちなみに黒子は今お前の後ろでお前をバカにしたポーズとっているぞ、緑間」 『え、まじでみんなあんなおもしろいの見えないの』 「むしろなんでお前は見えてんだよ上柿!!俺も今見失ってんのに!」
あれ、赤司くんだけかと思ったら上柿さんも見えてるんですか。ではちょっと遊びすぎましたかね。
「実はこの前これ見つけておもしろいから買ってみたんですが思いの外、服自体は着心地よくてよく着ているんですよ」 「その頭のは?」 「さすがにこいつは家ではかぶりませんけどね」
そうして「すみません、おちょくりすぎました。ボクはここです」と謝罪の意を示すと「黒子っちがまじでリアル黒子っちィィイ!!!」と黄瀬くんが叫び、「ちょ!顔隠してたらテツくんかどうかもわかんないよお!!」と桃井さんがなにやら泣いて、「黒ちん、なにそれウケる〜」と紫原くんが笑って、「悪ノリも大概にするのだよ!!」と緑間くんが怒って、「なんだよー!!俺なりに渾身のウケ狙ったのに反則だろテツぅぅ!!!」と青峰くんが嘆きだした。
「黒子はボクです」 「お前が黒子なのは分かったから」
おもしろ寝間着グランプリ優勝!と上柿さんがとても楽しそうに笑った。みんなの表情が種々様々であまりにおもしろいものだから、みんなに気付かれないようにボクも小さく笑った。
――本気でウケを狙ったらずば抜けてんのは四男なんです。
"Home, sweet home" 閑話V 130316
いろいろすまんかったと思っている。ギャグになり切れていない感が尋常じゃないですね。 桃井・あの子:おそろいのなんかかわいいの、赤司:和服、紫原:キャラT、緑間:正統派パジャマ+ナイトキャップ、黄瀬:ピ○チュウ着ぐるみ、青峰:「童貞魂」Tシャツ、黒子:いわゆる「黒子」さんの黒衣、長袖の甚平みたいなの
青峰のTシャツのプリントは「セミ人間」と迷ったんですけど、やっぱり「童貞Tシャツ」以上におもろいのはねーなと思ってこっちに。中二の時点で非童貞だったらごめんよ、青峰。
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