閑話U:下の子はケンカが絶えないって話




「……桃井さんはキレるとこわいんですね」


テツがしみじみと呟くもんだから、なんだか昔を思い出して遠い目をしてしまった。普段はどっちかっていうと弱ェくせになんかスイッチ入るとまじで怖いからな、さつきのやつ。黄瀬が「…お、俺、あんま桃っち怒らせないよう気を付けよーっと…」と若干涙目な状態で呟く。


「…気に食わないな」


そんな凍った空気の中で赤司が心底不愉快そうにそんなことを言うもんだから、さらに場の空気が固まる。…おいおい、まさか魔王降臨すんじゃねーだろうな!?


「赤ちん、なにが〜?」
「いや、八重は俺のものなのに、と思ってな」
「しつこいですね、ボクのですってば」
「…ほう、やはりお前とは決着をつけねばならないようだな、黒子」
「ふふ?望むところですよ、赤司くん」
「そうか、お前も大概命知らずなやつだな。いやあるいはそれともただのバカか?俺に勝てるわけでもあるまいに」
「勝てるかどうかは関係ありませんよ、ただボクはどうしても譲れないだけです。それにバカだなんてキミにだけは言われたくないですね」


その余裕そうな面を今日こそ歪ませてあげましょう、と背中に氷山の幻覚が見えそうなくらい絶対零度の声で、にやりと笑う赤司にテツが言い返す。げええぇ!!ドS双子が覚醒しやがったじゃねーか面倒くせェ!!


「…俺、この空気からするとまた被害受けるフラグがびんびんじゃないっすか……!!」
「御愁傷様だな黄瀬ぇ〜!」
「赤ちんが今日も楽しそうでなにより〜」
「まったくお前らは!!くだらん独占欲も大概にするのだよ!!!」


つーか、赤司は今日不器用赤司のターンじゃなかったのかよ。まあ、上柿のおかげでちゃんと吹っ切れたみてーだな。他人に関してはこえーくらい鋭いくせに自分に関してはめちゃくちゃ鈍いもんだから少しはかわいげがあったっつーのに、そんな弱点すら克服したんならもう最早あいつ最強じゃね?今後さらに強か且つあざとくなるんだと思うと、やっぱり今後赤司無双が繰り広げられることになるんじゃねーのって、そんなことを想像して冷や汗がでた。おいおい、夏なのにくっそ寒気するんだけど。


「今日こそ俺が最強だということを証明してやろうじゃないか、この両目に誓って」
「厨二病も大概にしたらどうですか赤司くん。あと、上柿さんを一番好きなのはボクです」


やべぇ、双子戦争開始だ!!赤司が厨二発言したときはノリに乗ったときだからな。まあ、ふたりとも生き生きしてっから別にいいけどよー。


「ぎゃああ!!なんで俺が巻き込まれてんすかあ!盾にしないで黒子っちお願い離してー!!!」


とりあえず末っ子黄瀬みてーにとばっちり受けねーように大人しくしとこ。お菓子食ってるにーちゃん紫原とため息つきながら遠い目をしているおとん緑間と目線を合わせて俺もため息をついた。


――下の子たちはいつもはちゃめちゃなんです。




"Home, sweet home" 閑話U
130316